スタンフォード大報告書:政府のAIガバナンスに課題残る

スタンフォード大学人間中心AI研究所(Stanford Human-Centered Artificial Intelligence)などは、連邦政府機関のAIガバナンス政策に進展があるものの、課題が残っていることを明らかにする報告書(Assessing the Implementation of Federal AI Leadership and Compliance Mandates)をまとめた。この中では、最高AI責任者(Chief AI Officer: CAIO)の指名やコンプライアンス計画、資金要求に関する各省庁の対応が検証されている。兼任CAIOへの「過度の依存」は人材不足の結果で、リスクに対するコンプライアンスやタイトな締め切りの重視は「CAIOという役職の幅広い目的を覆い隠」し、一貫性のないコンプライアンス計画は「AIの進展とガバナンスの断片的な側面を浮き彫りにしている」と結論づけている。また、報告書は政府の取り組みには「かなりの」進展があるとしつつ、効果的なAIリーダーシップの妨げとして、透明性の不足やリソースの制約、一貫性のない職務権限を挙げている。 FedScoop “Stanford report: Despite federal AI progress, barriers to governance persist” (01/17/25)

ローレンス・バークレー国立研究所、気象現象のグリッド回復力に関し報告

ローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)は、厳しい天候に対応した電力網の回復力計画の理解や評価の参考となる報告書「気象現象のグリッド回復力に関するデータ、指標、分析のギャップを埋める(Bridging the Gap on Data, Metrics, and Analyses for Grid Resilience to Weather Events)」をまとめた。この報告書は、調査とインタビューに基づき、気候変動に対する回復力やインフラの近代化、山火事の緩和などの分野に焦点を当て、各州が電力会社に求める回復力計画の要件と、電力会社による計画をレビューしている。さらに、これらの計画に一般的に含まれるデータや測定基準、分析の種類をまとめた表も掲載されており、規制当局が要件を示す際の指針となる。 Lawrence Berkeley National Laboratory “A Bridge to Better Informed Oversight of Grid Planning in the Face of Severe Weather” (01/16/25)

エネルギー省、サプライチェーン準備度枠組みを発表

エネルギーサプライチェーンの脆弱性を把握するため、エネルギー省(Department of Energy)の製造・エネルギーサプライチェーン局(Office of Manufacturing & Energy Supply Chains: MESC)はサプライチェーン準備度(Supply Chain Readiness Level: SCRL)枠組みを開発した。SCRLは、主要なエネルギーサプライチェーンにおけるリスクと準備態勢を評価し、米国のエネルギー安全保障や競争力を高める投資や政策決定のための情報となる。そのために各生産工程で一貫性のある指標を使用し、潜在的なボトルネックや投資先を見出しやすくする。これまで隠れていたリスクや世界的な競争状況を把握できるようにすることで、政府にデータ主導型の対応を促すことになる。 Department of Energy “Department of Energy’s Office of Manufacturing and Energy Supply Chains Releases Supply Chain Readiness Level Framework” (01/16/25)

マイクロソフトとエヌビディア トランプ政権へ独自のアプローチ

ニューヨーク・タイムズ紙は2月8日、テック大手のマイクロソフト社(Microsoft)とエヌビディア社(NVIDIA)が、トランプ大統領に対し、他の競合他社とは異なる手法で、戦略的にアプローチしていると報じた。エヌビディア社CEOのジェンスン・ファン氏(Jensen Huang)が8日に初めて官邸を訪問した一方で、マイクロソフト社のサティア・ナデラCEO(Satya Nadella)はその2週間後に、フロリダ州のマール・ア・ラーゴにあるトランプ大統領の別荘でひっそりとランチを共にしたといい、共に公になるような写真を撮られることはなかったと伝えた。大統領の就任式に参加しなかった両社であるが、大々的なアプローチを避けつつも、政策課題への対応や政府との関係強化に努めているといい、特にエヌビディア社はワシントンでの活動を強化し、米中関係やチップ販売規制に対応しているとみられる。水面下で政権との関係構築に努める両社による、トランプ政権下での事業戦略を慎重に進める姿勢が鮮明となったと論じている。 The New York Times ” Microsoft and Nvidia: The Tech Giants Taking a Quieter Approach to Trump ” (02/08/25)

DARPA、宇宙での大型構造物建設技術を軌道試験へ移行

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は2月10日、「ノーマッド(Novel Orbital and Moon Manufacturing, Materials, and Mass-efficient Design : NOM4D、軌道上および、月面での大規模構造物の製造計画)」プログラムの第3フェーズを、軌道上での小規模実証へ移行すると発表した。これはロケットのペイロード・フェアリング(空気抵抗を減少させるためにロケットの上部に取り付けられるカバー)のサイズや重量などの制約を克服し、軽量素材を用いた宇宙での組立技術を評価するもので、カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology: Caltech)とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois at Urbana-Champaign)が2026年に打ち上げを予定している。それぞれの技術実証に成功すれば、100メートル級の宇宙ベースの構造物建設が可能になるといい、国家安全保障や商業利用に大きな貢献につながるという。 DARPA” DARPA demos will test novel tech for building future large structures in space” (02/10/25)

APS 大規模CO₂除去技術の有効性を提言

米国物理協会(American Physical Society: APS)は1月27日、大規模な二酸化炭素除去(Carbon Dioxide Removal: CDR)技術が、気候変動対策に重要な役割を果たす可能性があるとし、その導入における膨大なエネルギーと資源の必要性について、同協会のホームページで報告した。同協会はCDR技術の技術的概要と物理的制約について、排出削減戦略と併用する必要性を強調したうえで、これまでの排出削減努力を妨げないよう、政府と産業界に対応を促している。さらに、大規模なCDR技術の実施には多くの課題を伴うものの、気候目標達成には不可欠とし、選択的な研究開発の継続を呼びかけている。報告書は、オープンアクセス学術誌の「PRXエナジー(PRX Energy)」にて、研究結果を考察する論説とともに掲載される予定で、2月27日午後12時(東部標準時)にはウェビナーとQ&Aセッションの開催も予定されている。 American Physical Society “Atmospheric Carbon Dioxide Removal (CDR) Report” (01/27/25)

AISI、スケールAIと提携 モデル評価を強化

FEDSCOOPは2月10日、AI安全研究所(AI Safety Institute: AISI)がスケールAI社(Scale AI)を初の第三者評価機関に選定し、AIモデル評価の新たな仕組みを導入すると報じた。評価基準はAISIとスケールAI社の研究所(Safety, Evaluation, and Alignment Lab: SEAL)が共同で策定し、数学、論理的思考(推論)、AIコーディングなどの性能が評価対象となるという。同社の研究ディレクター、サマー・ユエ氏(Summer Yue)は「モデル開発者に効率的な技術評価手段を提供する画期的な一歩」と述べ、これまでオープンAI社(OpenAI)などの大手AI企業に限られていたモデル評価が、中小企業へ門戸が開かれた決定を高く評価した。企業側は自社のAIモデル基準に基づいた評価を行うことで安全性や性能の向上が可能になり、政府にとっても独自に評価基盤を構築する時間とコストを削減することができる。希望に応じて、評価結果の共有もできるといい、国際的にもAIの安全性向上に寄与すると期待されている。 FEDSCOOP “US AI Safety Institute taps Scale AI for model evaluation” (02/10/25)

商務省、NOAAに助成金精査指示 「気候」や「炭素」など 

AXIOSは2月7日、商務省(Department of Commerce)が海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)に対し、気候変動関連プロジェクトに使われるキーワードを用いて、助成金の内容を調査するよう指示したと報じた。キーワードリストには「気候」「温室効果ガス」「パリ協定」などが含まれ、この検索による助成金の停止などが懸念されているが、具体的な影響は今のところ不明である。同省の指示はトランプ大統領の過去の執行命令に関連しており、NOAA以外にも米国科学財団(National Science Foundation: NSF)や国際開発庁(The United States Agency for International Development: USAID)など他の機関への資金削減の可能性が指摘されている。元NOAA長官リック・スピンラッド氏(Rick Spinrad)は、この調査に対して「狭量で見当違い」と批判している。NOAAは世界有数の気象・気候機関として、異常気象や気候変動への理解と予測を進めるために大学や研究機関に資金提供を行っている。 AXIOS “NOAA told to search grant programs for climate-related terms” (02/09/25)

AI利用は「協働」傾向へ 新経済指標「インデックス」で

AXIOSは2月10日、アンスロピック社(Anthropic)の新経済指標、「アンスロピック経済指数(Anthropic Economic Index)」による最新のユーザーAI利用動向は、自律型が43%、協働的な「拡張型」が57%となったと報じた。特にコンピュータ・数学分野でのAI利用率が37.2%と高く、続いて芸術・デザイン・エンターテインメント分野が10.3%を占めたという。同社の共同創設者のジャック・クラーク氏(Jack Clark)は、クロード(Claude)では執筆や編集の利用も増えていることに言及し、「AIにタスクを完全に委託するのではなく、ボールを打ち返すように、協働して利用するケースが出てきた」と述べた。同社はプライバシーを保護しつつ、独自のツールを用いて約100万件の会話データを分析し、AIの実際の使用状況を把握しているという。今後は半年ごとに追跡調査を実施し、データを外部研究者に公開する予定としている。 AXIOS “Exclusive: Anthropic’s “index” tracks AI economy” (02/10/25)

NIH、研究資金の間接費率を大幅削減 大学・機関が抗議

Scienceは2月7日、国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)が助成金の間接費率を従来の約30%から15%に即時引き下げる方針を発表し、大学や関連機関から強い反発と法的措置が相次いでいると報じた。NIHは2023年に約90億ドルの間接費として支出していたが、これが半減することにより、研究機関は数十億ドルの資金確保を迫られる見通しである。これに対し22州が訴訟を提起しており、連邦裁判所は同日にNIHの措置の差し止めを決めた。NIHは間接費削減が研究資金の効率化に繋がると主張するが、大学側は研究活動やインフラ維持に深刻な支障が出ると反論しているという。2月21日に本件に関する再審が行われる予定であるが、大学や研究者はこの政策が米国の研究と開発のエコシステムに深刻な影響を与えるとして懸念を表明している。 Science “NIH slashes overhead payments for research, sparking outrage and lawsuit” (02/07/25)