Day: June 16, 2026

中国の先端AI、米国安全保障の脅威に CNAS報告

新米国安全保障センター(Center for a New American Security: CNAS)は6月21日、中国の先端人工知能(AI)システムが国家安全保障に深刻な脅威をもたらすとの報告書を発表した。アリババ社(Alibaba)や百度(バイドゥ)社(Baidu)、ディープシーク社(DeepSeek)など7企業がコーディングや推論、エージェントタスクなど多岐能力を備えたAIを開発し、これらの「オープンウェイト」での公開や、米国競合を下回る破格のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)価格で世界中に拡散しているという。中国製AIによる脅威は、軍事能力やサイバー攻撃強化、検閲や世論誘導、産業支配の領域にまで及んでおり、特にDeepSeek製は米国製モデルに比べて悪意ある指示に従う確率が12倍高いなどの具体的な脅威も確認された。報告書は中国製モデルの能力に焦点を当てたリスク評価への注力を促しており、リリース後72時間以内のリスク評価公開や、脅威アラートの発出、同盟国との情報共有など6政策を提言している。 CNAS “Red Lines Understanding the National Security Risks of China’s Advanced AI” (06/12/26) https://www.cnas.org/publications/reports/red-lines

フィッチ、北米公益事業・電力部門の見通しを下方修正 中立から悪化へ

格付け大手フィッチ・レーティングス社(Fitch Ratings)は6月12日、北米の公益・電力セクターの2026年中期見通しを、これまでの「中立」から「悪化」へと引き下げたと報じた。データセンター急増や電化、製造業の国内回帰に伴い、電力需要自体は2030年まで年2.0~2.5%のペースで成長する見込みであるが、設備投資の増大に伴う電気料金の上昇が懸念されている。36州で予定されている11月知事選を控え、電気料金が選挙戦の主要争点として浮上しており、政治や規制当局による料金値上げへの反発という構造が顕在化しつつある。実際にインディアナ州やメリーランド州などで電気料金抑制のための法案が可決されたほか、ペンシルベニア州のエクセロン社(Exelon) 子会社のPECOエナジー社(PECO Energy)が料金値上げ申請を取り下げるなど、既にコスト回収の遅れや難航が表面化し始めた。電力各社は一般消費者への負担転嫁を防ぐためデータセンター向けの専用料金設定などを模索しているが、足元の巨額投資負担の相殺には至らないとみられている。 Fitch Ratings “Fitch Ratings Revises North American Utilities & Power Outlook to Deteriorating” (06/08/26) https://www.fitchratings.com/research/us-public-finance/fitch-ratings-revises-north-american-utilities-power-outlook-to-deteriorating-12-06-2026 参照記事: Utility Dive “Utility sector outlook deteriorates on affordability concerns: Fitch” (06/15/26) https://www.utilitydive.com/news/utility-sector-outlook-deteriorates-affordability-rates-fitch/822888/

中国の宇宙産業、急速な垂直統合で米国とのイノベーション格差を縮小

情報技術イノベーション財団(Information Technology & Innovation Foundation: ITIF)は6月8日、中国宇宙産業が中国共産党の支援を受けて強力な商業セクターへと発展し、米国とのイノベーション格差を縮小しているとの報告書を発表した。中国は宇宙機やロケットの膨大な垂直統合型製造拠点を構築しており、測位・航法・時刻同期(Position, Navigation, and Timing: PNT)や地球観測衛星の分野で世界をリードしている。また、独自の宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」の運用を2022年に開始したほか、対衛星兵器(Anti-satellite weapons: ASAT)などの軍事宇宙能力も高めているという。その一方で、実用的な再利用型ロケットや大規模な衛星インターネット・コンステレーションといった主要技術がいまだ不足しており、低軌道ブロードバンド分野では米国に後れを取っているという。報告書は特許や論文数での中国の台頭を指摘し、米国の宇宙領域における優位性維持には、国内での打ち上げ能力強化や国際パートナーとの緊密な連携が必要不可欠であると提言した。 ITIF “How Innovative Is China’s Space Industry?” (06/08/26) https://itif.org/publications/2026/06/08/how-innovative-is-chinas-space-industry/

データセンターの全国基準は見送り EPA、各州に判断促す

ポリティコ誌(Politico)は6月10日、急成長を続けるデータセンター業界に対し、トランプ政権が全国一律の環境要件や推奨基準を設定する方針はないと報じた。環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)のリー・ゼルディン長官(Lee Zeldin)がワシントンで開催されたエネルギー・サミットで明らかにしたもので、大気汚染や水消費を抑える技術は存在するものの、各地域の状況に合わせた最適な対応は州や地方自治体が最も熟知しているとし、データセンターは冷却方式や電力需要、地域環境がそれぞれ異なるため一概に同一視できないとの見解を示した。その上で、許認可手続きを除けば、EPAの役割は原則として助言にとどまるとの姿勢を明確にし、水利用を抑える密閉型の設計やハイテク企業による電力網増強費用負担などのベストプラクティスを共有しつつ、技術的専門知識の提供で地域を支援していく意向を示した。一方でEPAは、電力需要急増に対応するため、石炭火力汚染規則の撤回や、非常用ディーゼル発電機の運用規制緩和を進めている。 Politico “EPA won’t set nationwide standards for data centers” (06/10/26) https://www.politico.com/news/2026/06/10/zeldin-data-centers-states-00956574

ジェファーソン研究所、データセンター起工 AI活用の次世代研究を推進

エネルギー省(Department of Energy)傘下のトーマス・ジェファーソン国立加速器機関(Thomas Jefferson National Accelerator Facility: JLab)は6月12日、バージニア州ニューポート・ニューズの敷地内に新設する「ジェファーソン・ラボ・データセンター(Jefferson Lab Data Center: JLDC)」の起工式を開催した。政府が推進するAI科学構想「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」の基盤インフラとなる約3万平方フィート規模の高性能データ施設(High Performance Data Facility: HPDF)拠点となる予定で、同省傘下の全科学プログラムにおける科学データのアクセス・分析・共有方法を変革する。商業用とは異なり、科学研究データの一元管理や高度分析、リアルタイムのストリーミングに加え、AI応用へと特化した設計で、同省はデータや先端計算、実験機器を融合した同施設設立により全米の研究者への研究応用につなげると説明した。州政府が計4,930万ドルを拠出するなど、連邦・州・自治体、地域大学連合が連携するモデルケースとしても注目されている。 JLab “Jefferson Lab Breaks Ground on New Building to Power Next Generation of Scientific Discovery” (06/12/26) https://www.jlab.org/news/releases/jefferson-lab-breaks-ground-new-building-power-next-generation-scientific-discovery

国防総省「戦争省」への名称変更 上院軍事委員会が承認

ポリティコ誌(Politico)は6月11日、上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)が国防総省(Department of Defense)の正式名称を「戦争省(Department of War)」に変更することを承認したと報じた。トランプ政権による軍のイメージ強化に関する取り組みで、先週、下院軍事委員会を通過した。敵対勢力への強いメッセージ性を込めた改称により、国の確固たる姿勢を世界に示す狙いがあり、現在、本会議承認に向けた取り組みが進んでいる。一方で、民主党議員からは、外交を放棄して不確実な戦争に突入する現実を反映した「幼稚な動き」であるとの批判が上がっている。連邦議会予算局(Congressional Budget Office: CBO)は、完全な改称には最大1億2,500万ドルの費用がかかると試算しているものの、記事は、毎年議会を通過する国防権限法案(Defense Policy Bill)の草案に上下両院の委員会がこの改称案を盛り込んだことで、年内に法制化される可能性が一段と高まったと伝えている。 Politico “Senate panel approves Department of War name change” (06/11/26) https://www.politico.com/live-updates/2026/06/11/congress/senate-panel-approves-department-of-war-name-change-00958970

テネシー州で核融合の規制枠組みが発効、商業化へ前進

ニュークリアニュースワイヤー(NuclearNewwire)は6月12日、テネシー州による米国初の核融合装置に関する独自規制枠組み導入について報じた。必要な人員の確保や年1回以上の再訓練・試験、放射線安全責任者の任命、公衆安全・健康や財産を保護する設備施設と手順の確立などを義務付ける内容で、原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission: NRC)が核融合装置を商業用核分裂炉とは異なる枠組みで規制すると決めた2023年方針を受け、同州は今年3月に登録やライセンス供与の手順を定めた改正規則を提出していた。この動きは、同州オークリッジ近郊で出力400メガワット級の商業用実証プラント「インフィニティ・ツー(Infinity Two)」の建設を進めるタイプ・ワン・エナジー社(Type One Energy)事業を後押しするもので、同社は新枠組みのもと最初の認可を取得する見込みである。2028年にも着工予定で、業界からは州ごとの独自規制が乱立する懸念も、建設地選択の柔軟性などにより、州への権限移行は好意的に受け止められているという。 NuclearNewwire “Tennessee fusion regulations take effect” (06/12/26) https://www.ans.org/news/2026-06-11/article-8115/tennessee-fusion-regulations-take-effect/

気候科学報告書への妨害工作激化、化石燃料業界が訴訟リスク回避へ

ポリティコ誌(Politico)は6月11日、個別の自然災害に対する気候変動影響度を測定する研究分野「異常気象の因果関係特定(気候アトリビューション科学)」に関する取り組みに対し、化石燃料業界支持者らが妨害工作を行なっていると報じた。標的となっているのは、企業の温室効果ガス排出が災害を激化させているかを検証した米国科学・工学・医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine: NASEM)が近く発表する予定の報告書で、相次ぐ気候変動訴訟に直面している石油大手のエクソンモービル社(Exxon Mobil)などが、法廷での同社に対する責任追及を裏付ける強力な武器になり得ると懸念していることが裏にあるという。業界関係者らは、専門家15人で構成されるNASEMパネルの電子メール開示請求や情報収集を展開しており、既に同パネルから2人の専門家が辞任する事態を招いている。一連の動きについて、専門家らは、石油・ガス業界の法的責任を免責し、科学や対象科学者の信用を失墜させるための組織的な妨害工作と指摘しており、厳しく批判している。 Politico “Inside the campaign to discredit a key climate science report” (06/11/26) https://www.politico.com/news/2026/06/11/fossil-fuels-national-academies-climate-science-00897237

ジェネシス・ミッション採択結果を7月発表 AI活用で研究開発を推進

公共部門に特化したIT専門メディア・調査機関のメリトーク(MeriTalk)は6月9日、政府が推進する人工知能(AI)を科学的発見や国家安全保障に活用する構想「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」の選考結果を、エネルギー省(Department of Energy)が7月22日に発表すると報じた。マンハッタン計画やアポロ計画に匹敵する取り組みで、史上最強の科学ツールを開発すると説明している。昨年11月に始まった同構想は、量子コンピューティングや核融合エネルギー、医療など26の技術課題が特定され、公募には予想を大きく上回る約5,000件の提案が集まった。今回この中から約50件が採択される予定で、発表イベントには大手半導体企業幹部らも参加する予定となっている。また、この取り組みは国際的関心も高く、既に日本との間で、5年間で10億ドル規模の提携が発表されている。同省は、AI導入によって今後5年間で年間1兆ドルにのぼる研究開発成果の倍増を目指し、これまでの科学研究のあり方を根本から変革していく方針を示している。 MeriTalk “DOE to Unveil First Genesis Mission Awards July 22, Chief of Staff Says” (06/09/26) https://www.meritalk.com/articles/doe-to-unveil-first-genesis-mission-awards-july-22-chief-of-staff-says/

アンソロピックのAIモデル提供停止 政府、輸出管理対象に指定

NEXTGOV/FCWは6月13日、トランプ政権が人工知能(AI)を開発するアンソロピック社(Anthropic)に対し、最先端AIモデル2種への外国人アクセスを制限するよう命じたと報じた。対象となったのは「フェーブル5(Fable 5)」と「ミュトス5(Mythos 5)」で、同社は全てのサービス提供を急遽停止した。他社がミュトス5の「脱獄(ジェイルブレイク)」に成功したと主張し、安全保障上の懸念が浮上したことによる。これに対し同社は、指摘された抜け穴突破の仕組みはオープンAI社(Open AI)などの競合他社モデルにも当てはまると主張し、全顧客アクセスを遮断する正当性はないと反論している。対象モデルは攻撃的なサイバー作戦への悪用懸念も指摘されていたが、サイバー防衛やインフラ運用支援対応向けに、数日前に公開されたばかりだった。国防総省(Department of Defense)は決定を全面支持しているが、政府機関や同盟国による先端システム活用を複雑化させるほか、政治的判断による規制がイノベーションを損なうリスクも懸念されている。 NEXTGOV/FCW “Anthropic suspends top AI models after U.S. export control order” (06/13/26) https://www.nextgov.com/artificial-intelligence/2026/06/anthropic-suspends-top-ai-models-after-us-export-control-order/414173/?oref=ng-home-top-story