Day: June 10, 2026

エネルギー省、核融合技術ロードマップを策定 商用化を加速

エネルギー省(Department of Energy)は6月9日、核融合エネルギーの開発と商用化を史上最速かつ責任を持って推進する国家戦略「核融合科学技術(Fusion Science and Technology: FS&T)ロードマップ」の最終版を発表した。トランプ大統領が掲げる「エネルギー主権」政策に基づき、科学技術、インフラ、人材育成、商用化の政権優先事項を一つの国家戦略として統合し、2030年代半ばまでの実証炉及び商用核融合発電の実現を支援する。策定には産官学から800人以上の科学者や技術者が参加し、実証炉の実現に向けて克服すべき重要課題を特定した。戦略は、核融合材料と技術の格差を埋める重要インフラの構築、人工知能(AI)や高性能計算を活用した技術革新、官民連携によるエコシステムの拡大という3つの柱で構成され、既に100億ドルを超える民間投資が投じられている。同省は新設された「核融合局(Office of Fusion)」を通じて商業化に必要な技術開発や国内供給網強化を主導し、世界の商用化レースにおける米国の指導的地位の確立を目指すという。  Department of Energy “Energy Department Releases Finalized Fusion Science and Technology Roadmap to Accelerate Commercial Fusion Power” (06/09/26) https://www.energy.gov/articles/energy-department-releases-finalized-fusion-science-and-technology-roadmap-accelerate

連邦地裁、H-1Bビザ「10万ドル」手数料は違法と判決

ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)は6月9日、マサチューセッツ連邦地裁がハイテク企業や病院、大学などが高度専門職の外国人を受け入れる際に利用する「H-1Bビザ」の申請手数料を10万ドルへと大幅に引き上げたトランプ政権の措置を、無効とする判決を下したと報じた。カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官(Rob Bonta)ら19州が異議を申し立てていた。同地裁のレオ・T・ソロキン判事(Leo T. Sorokin)は、同政権による法外な手数料設定は行政手続法(Administrative Procedure Act)に違反しており、違法であると判断した。トランプ政権以前の申請手数料は弁護士費用を除き1人あたり総額5,000ドル以下で、大学や非営利団体にはさらに優遇措置が講じられていた。これに対し、政府は「大統領には国益に反する外国人の入国を制限する明確な権限があり、長年悪用されてきた同制度を是正した」と主張しており、控訴する方針とみられる。 The Washington Post “Trump’s $100,000 fee on H-1B visas for highly skilled workers is struck down” (06/09/26) https://www.washingtonpost.com/business/2026/06/08/court-strike-down-trumps-h-1b-100000-fee/

エネルギー省、アメリカン・バッテリー・テクノロジーへの助成を再開

アメリカン・バッテリー・テクノロジー社(American Battery Technology Company: ABTC)は6月8日、エネルギー省(Department of Energy)に提出した不服申し立てが認められ、5,700万ドル規模の助成が復活したと発表した。総事業費1億1,500万ドルに上るリチウム精製所建設事業に関するもので、同事業はネバダ州トノパー・フラッツにある国内最大級のリチウム資源を開発し、年間5,000トンの電池用水酸化リチウムの生産を目指している。しかし、昨年10月、同省が進捗遅延や経済的実現性を理由に、同社を含む数百件の助成金を一斉に打ち切ったことから、ABTC側は、技術・商業的目標をすべて達成していると主張し、審査を要求していた。このような規模の助成復活は極めて異例で、リチウム需要急増を背景に、国のエネルギー安保に寄与する事業として重要視されたとみられる。リサイクル事業のみでは賄いきれない国内電池材料の供給網(サプライチェーン)強化に向け、同社は連邦政府の継続的な支援を受けることとなった。 ABTC “American Battery Technology Company Wins Appeal and Has US Department of Energy Grant Reinstated for $115 million Project for Commercial Scale Critical Mineral Lithium Refinery” (06/08/26) https://americanbatterytechnology.com/press-release/american-battery-technology-company-wins-appeal-and-has-us-department-of-energy-grant-reinstated-for-115-million-project-for-commercial-scale-critical-mineral-lithium-refinery/ 参照記事: Utility Dive “DOE reinstates $57M American Battery grant” (06/09/26) https://www.utilitydive.com/news/american-battery-announces-reinstated-57m-grant-from-doe/822379/

連邦地裁、風力・太陽光発電向け5%セーフハーバー基準撤廃は無効と判断

ユーティリティ・ダイブ(Utility Dive)は6月9日、連邦地裁が風力及び太陽光発電事業の税額控除資格を巡り、総コストの5%以上を支出していれば対象となる「5%セーフハーバー(免責)規則」を廃止した財務省(Department of Treasury)指針を無効とする判決を下したと報じた。トランプ政権が、同規則から特定の再エネ技術を一方的に除外したことは、行政手続法(Administrative Procedure Act)が求める「合理的意志決定」の要件を欠き、不当であると判断し、内国歳入庁(Internal Revenue Service: IRS)への再検討を命じた。これにより、7月4日期限前の着工開始など、税額控除の優遇措置維持に向けた取り組みが活発になる可能性があると記事は伝えている。一方で、期限が迫る中、政府による控訴や、IRSによる新たな規制発行の可能性も指摘しており、専門家はこの5%基準だけに依存して事業を進めることの危険性を指摘しつつ、開発業者に対して慎重なリスク評価を促している。 Utility Dive “Judge restores 5% safe harbor rule for wind, solar ” (06/08/26) https://www.utilitydive.com/news/judge-restores-5-safe-harbor-rule-for-wind-and-solar/822313/

NIH、研究費の重複獲得に上限を設ける制限案を発表 資金分散で若手ら支援へ

国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)は6月8日、1人の研究者が同時に獲得できる研究事業助成金(Research Project Grants: RPG)の数に上限を設ける新たな政策案を発表した。1人への資金集中を防ぎ、多くの研究室へ分散することで科学的生産性とイノベーションを最大化することが狙いであるが、研究資金の増加に伴う生産性低下や、組織の肥大化が革新性を損なうとの指摘が背景にあるとみられる。一人当たり3件に制限した場合、20億ドルが浮き、新たに3,020人の研究者支援につながると試算しており、上限は2~4件の間で検討されているという。上限を超えた場合、既存の助成更新時などに責任者を他者に交代するか、期間終了を待って辞退するなどの対処が求められるが、NIHは本件に関する意見を8月3日まで募集している。同構想は2017年に猛反発を受け、撤回された経緯があり、今回も生産性の高い研究室の一律制限や、バイオバンクなどのコミュニティ資源を運営する研究者への不利益を懸念する声があがっている。 NIH “Request for Information: Proposal to Cap the Number of Simultaneous Research Project Grants per Principal Investigator to Support More Researchers and Maximize Scientific Productivity and Innovation” (06/08/26) https://grants.nih.gov/grants/guide/notice-files/NOT-OD-26-086.html 参照記事: Science “NIH plans to cap number of grants a scientist can have at once” (06/08/26) https://www.science.org/content/article/nih-plans-cap-number-grants-scientist-can-have-once

NSF、査読パネルに関する利益相反規則を厳格化

サイエンス誌(Science)は6月9日、米国科学財団(National Science Foundation: NSF)による利益相反(Conflict-of-interest: COI)規制の大幅厳格化方針について報じた。職員やボランティアで参加する外部審査員から構成される助成審査委員会に対するもので、これまでは所属機関の提案審査を辞退することで他のレビューへ参加できたが、8月3日に発効される新規則では審査パネル内のいずれか1件でも所属機関に関わる提案がある場合、そのパネル全体への参加が禁止される。これに対し、過去18カ月間で職員の約3分の1を失ったNSFの内部からは業務負担のさらなる増大を懸念する声が上がっている。NSFは毎年、約4万件の提案を科学的妥当性に基づき評価し、うち約1万件に資金提供を行い、提案の約90%は審査委員会または職員による内部審査で行っているが、今後は審査パネル細分化などの追加措置が必要となり、審査プロセスの質低下や遅延を招く恐れに加え、特に提案が少数の小規模科学分野では、有識者確保が極めて困難になると指摘されている。 Science “NSF imposes stricter conflict-of-interest rules for grant-review panels” (06/09/26) https://www.science.org/content/article/nsf-imposes-stricter-conflict-interest-rules-grant-review-panels

国防総省の兵器調達、構造的浪費を指摘 GAO報告

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は6月9日、国防総省(Department of Defense)の主要兵器開発プログラムが、数十年に亘り、予算超過や配備遅延を繰り返し、巨額の資金と時間を浪費してきていると発表した。象徴的な例として、陸軍の拡張現実(AR)ヘッドギア開発を挙げ、この計画では過去8年間で約1万個の初期モデルが製造されたものの、兵士の要求を満たせず実戦配備されないまま、倉庫に保管される事態となっているという。現行の調達方式は予算確保の都合から大規模契約締結が優先され、配備に12年間かかる傾向があり、その結果、導入を待つ間に世界の技術革新が先行し、現行仕様では対応できない状態を招くなど、同省が依然として構造的な問題を抱えていると指摘した。これに対し、民間企業は需要変化に合わせて予算や計画を段階的に見直し、迅速かつ低コストでの製品化を実現しているとし、GAOは、これら民間の先進的な手法を全面的に導入して無駄を省き、技術開発のスピードを加速させるよう強く勧告している。 GAO “Weapon Systems Acquisition: Beyond Business as Usual—Using Leading Practices to Curb Waste and Save Billions” (06/09/26) https://www.gao.gov/products/gao-26-109135

連邦政府の使用期間制度改定で離職率上昇 GAO報告

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は6月5日、大統領令や人事管理局(Office of Personnel Management: OPM)の指針を受けた試用期間制度改定により、多くの連邦機関で対象職員の人員削減や離職率上昇が進んだと発表した。新規採用者や新任管理職らの解雇判断において、従来の勤務評定や素行だけでなく「組織目標達成に貢献するか」という新たな基準が追加されたことによる。また主要11機関を対象とした調査では、2025年における試用期間中の職員離職率は19%に達し、全職員の平均離職率15%を上回った。エネルギー省(Department of Energy)が特に高水準で約34%となり、国防総省(Department of Defense)では約2万人に達した。また離職した使用期間中職員の78.6%にあたる4万1,482人は自主的な退職として扱われた。不服申し立ての手続きを巡っては、OPMが能力主義任用制度保護委員会(U.S. Merit Systems Protection Board: MSPB)に代わり全件裁定を担う規則改正を提案中で、最終規則発効まで上訴できない状態となっている。 GAO “Federal Workforce: Executive Actions Reshaped Probationary Employment Rules and Reduced Staff Levels at Selected Agencies” (06/09/26) https://www.gao.gov/products/gao-26-108557

DARPA、ドローン可搬重量を競うコンペの出場チームを発表

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は6月8日、大型垂直離着陸機の航空先端技術を競う「リフト・チャレンジ(Lift Challenge)」の第1弾に出場する72チームを発表した。連邦航空局(Federal Aviation Administration: FAA)の小規模無人航空機(ドローン)システム規則(Part 107)などの要件を満たしたチームが、480件以上の応募の中から選ばれた。軽量かつ本体の4倍の重量を持ち上げる強力な機体や、既存概念を超えた革新的なドローン設計を競う内容で、現行ドローンの可搬重量比はおおむね1対1以下にとどまり、この4対1という比率が実証されれば商業・軍事任務に大きな変革をもたらすと期待されている。特に推進・動力システムや空気力学におけるイノベーション開発に注目しており、最も高い可搬重量比と斬新なデザインを示した勝者には、総額650万ドルの賞金が授与される。開催はオハイオ州デイトンの国立アメリカ空軍博物館で8月2日から9日にかけて行われ、5海里の周回コースで実演審査を行う予定である。 DARPA “DARPA invites first wave of Lift Challenge competitors” (06/08/26) https://www.darpa.mil/news/2026/darpa-invites-first-wave-of-lift-challenge-competitors

PNNLとオレゴン州立大学が連携強化 AI・ロボット・次世代エネルギーの研究拡大へ

パシフィック・ノースウエスト国立研究所(Pacific Northwest National Laboratory: PNNL)は6月9日、オレゴン州立大学(Oregon State University: OSU)との連携強化・拡大に向けた覚書に調印したと発表した。4日に行われた調印式で、これまでの共同研究や教育基盤を元に、人工知能(AI)やロボット工学、先進エネルギーシステムなどの先端分野への取り組みを拡大発展させるとし、両機関独自の専門知識や最先端インフラも融合して、国家が直面する重要課題に取り組む方針を強調した。特に農学や微生物学、重要鉱物、海洋科学などの分野にAIや自動化技術を応用することで、研究加速や技術の社会実装を目指すとし、両機関の戦略的関係により科学的・経済的インパクトにつなげていく方針である。 PNNL “New PNNL-OSU Partnership Expands on Years of Collaboration” (06/09/26) https://www.pnnl.gov/publications/new-pnnl-osu-partnership-expands-years-collaboration