国務省、組織的人員削減の下で予想以上の数の科学技術関連職員が離職

国務省は、7月11日に組織的人員削減(reduction-in-force:RIF)を敢行したが、科学・技術関連部署において当初予想以上の数の職員が離職し、当該分野における将来の外交に不安をもたらしている。特に、将来の国際科学技術協定、米国人科学者による国際研究開発施設へのアクセス、研究者データの保護などといった問題における米国の利益擁護、中国とのAI・量子開発競争に勝利するための国家の取り組みなどへの影響に関する懸念が表明されている。また、技術は世界的な繋がりのあるもので、政府は米国で最高の国際専門家を排除したとの意見もあり、科学技術関連職員の削減は同分野における国際条約・協定からの撤退の兆候である可能性も懸念されている。人員削減による影響を特に大きく受けた部署には、①科学技術協力局(Office of Science and Technology Cooperation:STC)の完全廃止、②サイバースペース・デジタル政策局(Bureau of Cyberspace and Digital Policy:CDP)及び重要・新興技術特使局(Office of the Special Envoy for Critical and Emerging Technology:S/TECH)における複数の役職の廃止、などが含まれる。なお、S/TECH、STC、及び、科学技術顧問(Science and Technology Adviser)の機能を吸収する計画が国務省から発表されていたCDPは、経済成長・エネルギー・環境局(Bureau of Economic Growth, Energy, and Environment)と改称されている。 Fedscoop “State Department layoffs cut science, tech offices deeper than anticipated” (07/16/25) State Department layoffs cut science, tech offices deeper than anticipated

INLとマイクロソフト社、原子力許可・ライセンシングへのAI・クラウド導入で協力

アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory:INL)とマイクロソフト社(Microsoft)は7月16日、原子力の許可・ライセンス付与関連分野に人工知能及びクラウド機能の導入に向けて協力していることを発表した。INLは、工学・安全性分析報告書作成において、アジュール(Azure)AIサービスが組み込まれたマイクロソフト社開発のソリューションを活用すると発表している。エネルギー省原子力エネルギー局(Office of Nuclear Energy)は、傘下の国立原子炉イノベーションセンター(National Reactor Innovation Center)を通して同パートナーシップに資金を提供している。INLは、「Azure」ソリューションはINL職員による審査手続きの合理化・迅速化に役立ち、提出された工学・安全関連文書の分析や、米国原子力規制委員会(U.S. Nuclear Regulatory Commission:NRC)及びエネルギー省が原子力ライセンス付与のために義務付けている文書の作成にも使用としている。 NextGov FCW “Idaho National Lab teams up with Microsoft to improve nuclear permitting reviews” (07/16/25) https://www.nextgov.com/acquisition/2025/07/idaho-national-lab-teams-microsoft-improve-nuclear-permitting-reviews/406772/

上院外交委員会民主党、トランプ政権により中国との競争に敗北する危機を警告

上院外交委員会(Senate Committee on Foreign Relations)は7月14日、報告書「後退の代価:米国による中国への世界的リーダーシップの譲渡(The Price of Retreat: America Cedes Global Leadership to China)」を発表した。本報告書は、同委員会所属民主党議員が作成したもので、トランプ政権発足後の6カ月間で他国との提携・経済パートナーシップが損なわれたため、米国による対中国競争力の弱体化を警告している。特に、米国の研究・イノベーションへの悪影響に関しては、米国科学財団(National Science Foundation:NSF)及び国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)を含む連邦研究資金提供機関の予算大幅削減に言及し、米国科学研究・イノベーションシステムに恒久的損害をもたらす可能性があるとした。また、米中2国間でのSTEM分野従事者数の格差は縮小され、中国政府による国内STEM研究及び外国からの人材採用プログラムへの投資拡大の効果が表れつつあるのに対し、トランプ政権は、連邦科学研究省庁予算の削減、留学生への弾圧、著名米国大学への攻撃を行うなど、世界中の才能ある人材の目的地としての米国の評判を著しく傷つけることになったと批判した。さらに、優秀な人材を米国内から喪失すると共に、技術イノベーションに関する中国との競争において、修復不可能な後退をもたらす可能性があると警告している。 Senate Committee on Foreign Relations “The Price of Retreat: America Cedes Global Leadership to China” (07/14/25) https://www.foreign.senate.gov/imo/media/doc/sfrc_minority_china_report.pdf

中国、科学技術を党統制下に再編 NSF報告

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は6月、中国が科学技術(S&T)エコシステムを国家安全保障と緊密に連携させ、中国共産党(Chinese Communist Party: CCP)の強力な統制下に置く大規模な再編を進めていると発表した。この再編は、中央科学技術委員会(Central Science and Technology Commission: CSTC)などの主導により、研究開発を国家目標達成のための手段と明確に位置付けるもので、習近平国家主席(Xi Jinping)が掲げる「新たな生産力(New Productive Forces)」理論の下、技術革新を通じて世界における経済的・軍事的優位性の確立を目指すものである。中国政府によるデータ安全法(Data Security Law: DSL)や改正反スパイ法(Counterespionage Law)などの強化が、国際共同研究におけるデータ移転や知的財産(Intellectual property: IP)のリスクを増大させると指摘し、また軍民融合の増強や巧妙化する人材獲得プログラムにより、米国の研究成果が意図せず中国の国力増強に利用される危険性があるとしている。 NSF ” China Refocuses Its Science and Technology Ecosystem on Innovation and Security” (June 2025) https://risc.tamus.edu/wp-content/uploads/2025/06/NSF_ADVISORY_01_China-Refocuses_web-250626_rev-1.pdf

米国科学振興協会(AAAS)、2026年度R&D予算案を分析

米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science: AAAS)は7月15日、2026年度大統領予算案を分析した結果を発表した。これによると、研究開発費(R&D)は前年度比で22%減の約1,540億ドルであるという。2026年度予算案は、第2期トランプ政権による初の予算案であり、多くの連邦機関における大幅な構造改革と縮小が計画されている。全体で440億ドルの減少となり、基礎研究と応用研究はそれぞれ3分の1以上の予算削減となっている。特に非軍事分野での影響が大きく、軍事R&Dは9.5%減である一方、非軍事分野は35.9%の大幅減である。この動きは科学技術分野に多大な影響を及ぼすと予測され、関係者からは懸念の声が上がっている。 AAAS “FY 2026 R&D Appropriations: Federal R&D Estimates” (07/15/25) https://www.aaas.org/news/fy-2026-rd-appropriations-federal-rd-estimates

グーグル社、ブルックフィールド社から最大3GWの水力発電を購入へ

グーグル社(Google)は、ブルックフィールド・リニューアブル社(Brookfield Renewable)から最大3ギガワット(GW)の水力発電を購入することで合意し、当初は、PMJインターコネクション(PJM Interconnection)とミッドコンチネント独立系統運用機関(Midcontinent Independent System Operator: MISO)のサービス地区から購入する計画を7月15日に発表した。本契約は、「グーグル社のデータセンターやその他の事業を炭素フリー電力で行うことを可能にするもの」であるという。具体的に、契約期間最初の20年間は、ペンシルバニア州にあるブルックフィールド社のホルトウッド(Holtwood)及びセーフ・ハーバー(Safe Harbor)水力発電施設から合計約670メガワット(MW)を購入する。 Utility Dive “Google to buy up to 3 GW of hydro power from Brookfield” (07/15/25) https://www.utilitydive.com/news/google-hydro-power-brookfield-renewables/753039/

州政府、分散型ソーラー発電の評価と消費者保護を推進

NCクリーンエネルギー・テクノロジーセンター(NC Clean Energy Technology Center: NCCETC)は、2025年第2四半期版「50州のソーラー発電(The 50 States of Solar)」を発表した。分散型ソーラー発電政策に関する州の規制や議会における審議・措置について洞察を提供するもので、報告書によれば、48州とワシントンDC、プエルトリコは、2025年第2四半期に何らかの分散型ソーラー政策措置を講じたという。最も多かったのは、ネットメータリング政策関連(68件)で、次いでコミュニティ・ソーラー政策(48件)、住宅用固定料金または最低請求額の引き上げ(39件)となっている。また、同期間中に合計252件の分散型ソーラー政策が講じられ、その数が最も多かった州は、コロラド、コネチカット、バージニア、ミネソタ、ニューヨーク、ニュージャージーとなっている。 NC Clean Energy Technology Center “The 50 States of Solar: States Delve into Distributed Generation Valuation and Consumer Protection in Q2 2025” (07/16/25) The 50 States of Solar: States Delve into Distributed Generation Valuation and Consumer Protection in Q2 2025

研究者の所在地、論文生産性に影響

全米経済研究所(National Bureau of Economic Research: NBER)は今般、「発見が生じる場所:生命科学における研究組織と基礎的知識(Where Discovery Happens: Research Institutions and Fundamental Knowledge in the Life-Sciences)」と題する論文を発表した。米国内の30万名以上の生命科学研究者を対象に、キャリアを通じて移転した研究者の論文(1945~2023年に発表された論文)を追跡調査したもので、それによれば、研究者の生産性の50%以上は、所属する組織に起因するという。この論文は、限りある研究資金をどのように配分すべきか、また、助成金が一部の大手大学に集中することを防ぐ政策を実施すべきか否かに関する長年に亘る議論に示唆を与えるものである。論文によれば、ボストン地域の研究者の生産性が最も高く、基礎生命科学を網羅する15の専門誌に掲載された年間論文数が、その他の都市圏の研究者と比べて2~3倍となっている。また、さほど生産的でない組織から生産性が高い組織へと移転すると、その研究者の生産性も向上するという。 Science “Large study of scientists who move their labs reveals how location drives productivity” (07/15/25) https://www.science.org/content/article/large-study-scientists-who-move-their-labs-reveals-how-location-drives-productivity

トランプ大統領、ペンシルバニア州でエネルギー・イノベーション・サミット主催

トランプ大統領は7月15日、米国の大手技術・エネルギー企業の幹部や政権高官が参加する中、初となる「エネルギー・イノベーション・サミット(Energy and Innovation Summit)」を開催し、数百億ドルに上る複数の大型投資を発表した。その中には、グーグル社(Google)によるデータセンター及びインフラへの250億ドル投資、ブラックストーン社(Blackstone)によるデータセンター及び天然ガスプラントへの250億ドル投資、コアウィーブ社(CoreWeave)によるデータセンター拡大に60億ドル投資が含まれる。本サミットは、イノベーション、雇用創出、米国の覇権に対する米政権の揺るぎないコミットメントを強調するものである。 White House “President Trump Solidifies U.S. Position as Leader in AI” (07/15/25) https://www.whitehouse.gov/articles/2025/07/president-trump-solidifies-u-s-position-as-leader-in-ai/

ウィリアムズカレッジ、新たな連邦助成申請を行わないことを所属教員に通知

著名教養大学のウィリアムズカレッジ(Williams College)は、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)及び米国科学財団(National Science Foundation:NSF)に研究助成申請を提出する際に順守すべき多様性・公平性・包摂性(diversity, equity, and inclusion:DEI)関連の規定が明確化されるまで、同大学からの連邦研究助成申請を一次停止することを5月30日付電子メールで所属教員に通知したことが明らかになった。大統領府による連邦省庁への反DEI政策に対し、このような措置を取った高等教育機関は同大学が初となる。ウィリアムズカレッジの対応は、NSF助成採択を受けた同大学所属教員が、新たなDEI条件を理由として助成受給が遅れていることに端を発している。同大学は、教員宛に送付した電子メールにおいて、大統領府が要求する要件は学問の自由を著しく損なうものと主張している。また、司法省は、連邦助成受給研究機関が連邦市民権法に抵触していると民間個人が考える場合、同個人による当該研究機関の告訴を認めるというイニシアティブを5月に新たに発表しており、同大学は、連邦助成受給を拒否することで、同大学が提訴されるリスクを軽減することにもなると電子メールに記載している。なお、ウィリアムズカレッジ所属教員は、大学当局の対応に賛否両方の見解を表明している。 Science “Exclusive: U.S. college is first to decline federal science grants because of new DEI language” (06/06/25) https://www.science.org/content/article/u-s-college-first-decline-federal-science-grants-because-new-dei-language