Category:その他
米国、科学超大国解体の危機 「学問の自由」をめぐる環境悪化
リサーチ・プロフェッショナル・ニュース(Research Professional News)は10月1日、米国の科学研究における世界的地位が「前例のない自発的な解体(Unprecedented, voluntary dismantling)」の危機に直面していると報じた。学術団体の国際ネットワーク、スカラーズ・アット・リスク(Scholars at Risk: SAR)が発表した報告書、2025年版「考える自由(Free to Think)」によると、2023年以前は年間15~20件であった国内における学問の自由への攻撃が、2024年には80件に急増し、2025年上半期だけでも40件以上が確認されたという。多様性・公平性・包括性(DEI)に関する政府方針に合致しない助成金が相次いで取り消されていることが背景にあるが、SARは「米国の民主主義を損なう」とし、国際的な高等教育界のリーダーや政府関係者による対応の必要性を訴えている。報告書はまた、学問の自由をめぐる世界的な状況が悪化しているとも指摘しており、問題への認識を広めること、教育機関全体で連帯し、ネットワークを構築するなどを呼びかけている。 ResearchProfessional News “US facing ‘dismantling’ of science superpower status, report warns” (10/01/25) https://www.researchprofessionalnews.com/rr-news-world-2025-10-us-facing-dismantling-of-science-superpower-status-report-warns/
政府閉鎖 スパコンは当面運営を継続
HPCwireは10月6日、国立研究所のスパコン施設の運営は当面、既存資金で継続されると報じた。政府閉鎖が背景にあるが、オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)、サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories)、サバンナリバー国立研究所(Savannah River National Laboratory)などのエネルギー省付属主要施設によると、手元資金による運営は数週間のうちに枯渇する可能性もあるという。一方で、エネルギー省(Department of Energy)傘下の複数の研究所は、現時点で通常通り稼働しており、職員も勤務を継続している。また、イリノイ大学(University of Illinois)の国立スパコン応用研究所(National Center for Supercomputing Applications: NCSA)のビル・グロップ所長(Bill Gropp)も、大学のスパコンは米国科学財団(National Science Foundation: NSF)からの助成で運営されており、影響を受けていないと述べた。さらに科学局(Office of Science)傘下の研究所も資金不足に陥っておらず、通常通り運営しているという。 HPCwire “Government Supercomputing Labs Are Still Open, For Now” (10/06/25) Government Supercomputing Labs Are Still Open, For Now
パシフィック・フュージョン、ニューメキシコ州に核融合開発施設建設
ニューメキシコ州のミシェル・グリシャム知事(Michelle Lujan Grisham)は9月26日、核融合開発のパシフィック・フュージョン社(Pacific Fusion)がアルバカーキのメサ・デル・ソルに10億ドルを投じ、研究・製造キャンパスを建設すると発表した。同社は、2030年までの施設全体におけるエネルギー純増(net facility gain)達成に向け、州政府及び地方自治体と連携し、クリーンテクノロジー経済の拡大に取り組む。これに伴い、同州投資評議会(State Investment Council)のベンチャー投資戦略も立地決定を後押しし、ゼネラル・カタリスト社(General Catalyst)やブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ社(Breakthrough Energy Ventures)などから9億ドル以上の調達に成功した。今回の誘致により同州の経済開発省(Department of Economic Development)のロブ・ブラック長官(Rob Black)は、同州における新たな産業チェーン形成と将来の雇用創出につながると評価した。パシフィック・フュージョン社は、年内に製造オペレーションに関する枠組みを段階的に立ち上げ、2026年に施設建設を開始する予定という。 Michelle Lujan Grisham “Governor announces $1 billion fusion research and manufacturing campus in New Mexico – Pacific Fusion project will create hundreds of jobs” (09/26/25) https://www.governor.state.nm.us/2025/09/26/governor-announces-1-billion-fusion-research-and-manufacturing-campus-in-new-mexico-pacific-fusion-project-will-create-hundreds-of-jobs/
米研究者のEU移転希望、急増
ポリティコ(Politico)は9月30日、欧州研究会議(European Research Council: ERC)助成に関し、米国を拠点とする研究者からの応募が前年比5倍に増加したと報じた。トランプ政権による研究予算削減を受け、ERCは今春、欧州への移転を希望する在米研究者への追加助成額を従来の100万ユーロから200万ユーロに倍増すると発表したことが背景にある。8月末に締め切られた最新募集によると、米国からの応募数は23件から114件と急増し、全体応募数も2,534件から3,329件へと31%増加した。中でもオーストリア科学アカデミー(Austrian Academy of Sciences)は米国から25名の研究者を獲得した。欧州各国・地域・大学・研究機関で70以上の研究者誘致イニシアチブが設けられ、英国からは538件、EU内ではイタリア445件、スペイン240件に上るなど、欧州全域でも研究誘致競争が激化しつつある。 Politico “Top US researchers rush to relocate to Europe” (09/29/25) https://www.politico.eu/article/european-research-council-funding-us-researchers-relocation-europe/
エネルギー省、科学局諮問委員会を新設
エネルギー省(Department of Energy)は9月30日、科学局(Office of Science)全体を支援する包括的な諮問機関として科学局諮問委員会(Office of Science Advisory Committee: SCAC)を設立すると発表した。複雑な科学技術問題に関して、独立した合意形成に基づく助言を提供するのが目的で、同省のダリオ・ギル科学担当次官(Darío Gil)は今回の新設について「学術界、産業界、国立研究所のリーダーとエネルギー省を結び付け、研究の最前線に留まるための新たな道筋を示すもの」と述べた。また、「変化する科学的状況に適応すべく、分野横断的な研究に効率的かつ柔軟に対応する」ため、従来の6つの科学局諮問委員会の中核機能を引き継ぎ、これらの委員会が担っていた責務すべてをSCACに移管すると説明した。なお、SCAC委員の任命については同氏が行うとし、同局の研究分野全般を網羅する専門家で構成していくという。 Department of Energy “DOE Establishes the Office of Science Advisory Committee” (09/30/25) https://www.energy.gov/science/articles/doe-establishes-office-science-advisory-committee
トランプ大統領、アラスカの鉱物資源開発へ道路建設承認
大統領府は10月6日、国内の重要鉱物確保に向け、アラスカ州アンブラー鉱区につながる道路を建設するアンブラー道路プロジェクト(Ambler Road Project)をトランプ大統領が承認したと発表した。銅、コバルト、ガリウム、ゲルマニウムなどの重要鉱物の大規模鉱床がある同地区へのアクセスが困難なことから、アラスカ産業開発輸出公社(Alaska Industrial Development and Export Authority: AIDEA)によるダルトン・ハイウェイからアンブラー鉱区(Ambler Mining District)までの全長211マイルの産業道路建設を認可する。これに伴い、政府はカナダのトリロジー・メタルズ社(Trilogy Metals)との提携を発表し、3,560万ドルを投じて同社の株式10%を取得したほか、7.5%の追加取得権を確保した。2,730人の雇用創出に加え、11億ドル以上の州経済への効果を見込むが、環境への影響も考慮し、カリブー(トナカイ)保護政策や魚道の設置など広範な緩和策を講じるという。 The White House “Fact Sheet: President Donald J. Trump Approves Ambler Road Project to Unlock Alaska’s Mineral Potential” (10/06/25) https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/10/fact-sheet-president-donald-j-trump-approves-ambler-road-project-to-unlock-alaskas-mineral-potential/
EPA、70億ドルのソーラーエネルギー・プログラムの中止を巡り提訴される
労働組合等で構成される原告は10月1日、低所得者と社会的に不利なコミュニティへの支援を意図して議会が創設した「全ての人にソーラーを(Solar for All)」プログラム(屋根上及びコミュニティ向けソーラープログラム)を、環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)が政治的動機に基づいて中止したことは違法であるとして、EPAを提訴した。原告は、議会が本プログラムの根拠法を今年7月に撤廃した際、「撤廃は、まだ充当されていない(unobligated)資金のみが対象で、既に提供された資金には影響しない」と明確にしたにもかかわらず、リー・ゼルディンEPA長官(Lee Zeldin)は、その文言を無視し、「全ての人にソーラーを」プログラムを違法に停止したと主張する。原告によると、議会は2024年に、EPAに対して、対象となる受益プロジェクトへ70億ドルの助成金を提供するよう義務付けていたという。 Ars Technica “Trump’s EPA sued for axing $7 billion solar energy program” (10/06/25) https://arstechnica.com/tech-policy/2025/10/trumps-epa-sued-for-clawing-back-7b-in-solar-energy-funds/
トランプ政権、政府監察機関のウェブサイトを閉鎖
NEXTGOV/FCWは10月1日、トランプ政権が政府監察総監評議会(Council of the Inspectors General on Integrity and Efficiency: CIGIE)への資金提供を停止し、少なくとも15の政府監視ウェブサイトが閉鎖されたと報じた。具体的に、行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB)が、監察官が「腐敗し、党派的になり、一部は国民に嘘をついている」と声明を発表し、資金拠出を停止したことを受けて、農務省(Department of Agriculture)、教育省(Department of Education)、司法省(Department of Justice)などの監察総監室ウェブサイトが閉鎖された。これに伴い、内部告発者向けのホットラインや3万4,000件以上の監査報告書へのアクセスも遮断されたという。一部の共和党議員はこの動きに反対し、方針の撤回を求めている。また、政府監視プログラム(Project on Government Oversight)も「内部告発者保護の弱体化は権威主義体制の特徴」と言及した。記事は、政府の不正や無駄遣いを報告する重要な経路が失われることになると示唆している。 NEXTGOV/FCW “Trump administration knocks out at least 15 oversight websites, saying IGs ‘lied to the public’” (10/01/25) https://www.nextgov.com/digital-government/2025/10/government-watchdog-websites-go-dark-omb-withholds-funds-ig-committee/408524/
オフテイク契約、再エネ事業活性化に貢献 CEBA報告
クリーンエネルギー購入者協会(Clean Energy Buyers Association:CEBA)は9月30日、企業の長期電力購入契約(オフテイク契約)が再生可能エネルギープロジェクトの財務リスクを大幅に軽減し、資金調達と建設を可能にしていると発表した。同協会は国内251の風力・太陽光発電プロジェクトの財務状況を分析し、企業による電力購入契約がある場合、財務的困難に直面する割合が大幅に減少することを明らかにした。固定価格での長期取引を可能にする仮想電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreements: VPPA)が、卸電力市場の価格変動による収益の不安定性を緩和することから、企業は2014年から2024年の間、100ギガワット以上のクリーンエネルギー契約を締結しており、これは過去10年間に米国の電力網に追加されたクリーンエネルギー容量の41%に相当するという。報告書は、再エネ計画は安価なため企業契約なしでも建設されるとする最近の論調に対し、企業の購入契約がプロジェクトの実現に不可欠であることを実証する内容となっている。 CEBA ” CEBA Report: Corporate Demand Drives Clean Energy” (10/03/25) https://cebuyers.org/wp-content/uploads/2025/09/CEBA-Report-Corporate-Demand-Drives-Clean-Energy.pdf 参照:Utility Dive “Corporate procurement stabilizes renewable energy projects: CEBA” (10/02/25) https://www.utilitydive.com/news/corporate-procurement-renewable-energy-vppa-rec-hyperscaler-ceba/801750/
カリフォルニア州知事、電力負荷に柔軟に対応する法案に拒否権
ユーティリティ・ダイブ(Utility Dive)は10月3日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(Gavin Newsom)が電力網計画における負荷柔軟性の成文化を目指す法案を拒否したと報じた。電力需要を柔軟に調整することで電力網の効率化を図るAB 44法案は、州エネルギー委員会に負荷管理メカニズムの評価と報告を求めるものであるが、同知事は「電力負荷の柔軟性拡大は支持するが、この法案はカリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utility Commission)の資源供給力(Resource Adequacy)の枠組みと一致しない」と説明した。業界団体のアドバンスト・エナジー・ユナイテッド(Advanced Energy United)は、この決定を「コスト削減と電力網を強化する絶好の機会を逃した」と批判しており、ブラトルグループ(Brattle Group)も今回助成が見送られた世界最大の仮想発電所(Virtual power plant: VPP)プログラムは2028年までの4年間で2億600万ドルのコストを削減し、ピーク需要に対応するガス発電所の需要減にもつながるはずだったと指摘している。 Utility Dive “Newsom vetoes bill to codify load flexibility in California grid planning” (10/03/25) https://www.utilitydive.com/news/newsom-vetoes-bill-load-flexibility-california-cec/801890/