連邦研究資金削減、国や州などの経済に深刻な打撃

トランプ大統領は、科学・研究への連邦支出に大幅な削減を提案しているが、最近発表された複数の報告書や論文は、これらの削減は国、州、地方レベルを含め、米国経済全体に深刻な打撃をもたらすと指摘している。例えば、アメリカン大学(American University)のエコノミストによる分析報告によれば、連邦研究開発支出が25%削減されると、米国の国内総生産(GDP)は、2008年の金融危機による大不況(Great Recession)時のGDP低下に匹敵する低下になるという。また、ニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)は先般、国立科学技術統計センター(National Center for Science and Engineering Statistics:NCSES)が収集したデータを分析した結果、2023年度だけで約600億ドルの連邦資金が全国の大学へ提供され、癌やアルツハイマー病、希少アイソトープ・ビームなど様々な研究の資金源となっていることが明らかとなったとし、大学研究への連邦支出はしばしば周囲のコミュニティに経済的繁栄をもたらすと報道した。更に、全国の官民の研究大学及び提携機関で構成される科学同盟(Science Coalition)は最近、基礎科学研究への連邦投資から生まれた技術的達成や業界を先導する企業を取り上げた報告書を発表した。これらの報告書は、米国が研究開発への連邦支出を優先し続ける必要があることを示している。 Association of American Universities “Reports Say Cuts to Federal Research Funding Would Seriously Harm National, State, and Local Economies” (05/02/25) https://www.aau.edu/newsroom/leading-research-universities-report/reports-say-cuts-federal-research-funding-would

トランプ政権、ハーバード大学への新たな助成金を停止

トランプ政権は5月5日、ハーバード大学(Harvard University)への新たな助成金を全て停止すると発表した。教育省(Department of Education)のリンダ・マクマホン長官(Linda McMahon)は同大学宛ての書簡の中で、「ハーバード大学への連邦による新たな助成は今後提供されないので申請する必要はない」と通達した。既に、ハーバード大学が政権による数々の要求を拒否した後、政権は同大学への22億ドルの連邦資金を凍結しており、ハーバード大学が政権を提訴した中での新しい動きである。トランプ大統領は連邦資金を通じて大学の優先事項に影響力を及ぼし、方向転換させることを模索しており、ハーバード大学は、大統領による大学を相手とする戦いの矛先となっている。トランプ大統領は更に、同大学の免税資格のはく奪という(法的な正当性は疑わしい)脅しをかけている。 AXIOS “Trump admin to halt new grant funding to Harvard” (05/06/25) https://www.axios.com/2025/05/06/harvard-trump-grant-funding

再エネ規制で電力価格が14%上昇 猛暑時は最大62万世帯が停電リスクに

エネルギー市場分析のオーロラ・エナジー・リサーチ(Aurora Energy Research)は4月16日、テキサス州での再生可能エネルギー導入制限により2035年までに卸電力価格が14%上昇し、消費者の電気料金も約10%増加する見通しと発表した。報告書によると、再エネ規制により年間システムコストは52億ドル増加し、1世帯あたり年225ドル、産業用100MWユーザーで年間630万ドルの負担増となるという。また、夏の厳しい気象条件下では1.8~3.1GWの需給不足が生じ、最大62万世帯が停電に陥る可能性もあるとも指摘した。同州はデータセンターやビットコイン採掘など急増する電力需要に直面していることに加え、供給網構築が遅延し、火力発電機(ガスタービン)の供給遅延や新規電力導入制限も課題となっている。これに対応するため、報告書では、全方位的なエネルギー政策支援と、再生可能エネルギーや蓄電池など柔軟な発電源の併用が不可欠であるとし、再生可能エネルギーが価格安定と信頼性確保に貢献すると提言している。 Aurora Energy Research “Texas consumers face 10% increase in power bills and higher reliability risks without renewables expansion, Aurora Energy Research finds” (04/16/25) Texas consumers face 10% increase in power bills and higher reliability risks without renewables expansion, Aurora Energy Research finds 参考:UTILITY DIVE “Texas renewables restrictions could increase power prices by …
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17州とDC、トランプ政権の風力発電開発停止命令に反対

UTILITY DIVEは5月6日、民主党が主導する17の州とワシントンDCが、大統領令による風力発電認可停止の無効化と差し止めをマサチューセッツ連邦地裁に求めて提訴したと報じた。ニューヨーク州、カリフォルニア州などが原告に含まれ、被告にはトランプ大統領、内務省(Department of the Interior)、ダグ・バーガム内務長官(Doug Burgum)、商務省(Department of Commerce)、米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration:NOAA)が名を連ねている。訴状では、大統領令が州の電力需要対応や大気汚染対策を阻害し、既存の風力関連投資に甚大な影響を及ぼしていることに加え、行政手続法(Administrative Procedure Act)や大気浄化法(Clean Air Act)、絶滅危惧種保護法(Endangered Species Act)、外縁大陸棚法(Outer Continental Shelf Lands Act)など複数の法律に違反しているとし、命令により、風力発電の認可作業が事実上停止しており、業界は存亡の危機に直面していると主張している。 UTILITY DIVE “States sue Trump administration over halt on wind energy development” (05/06/25) https://www.utilitydive.com/news/states-sue-trump-halt-wind-energy-development-approvals/747224/

OSTP、科学技術の主導権維持へ 

NEXTGOV/FCWは5月5日、カリフォルニア州ロサンゼルス市で開催されている会議(Milken Institute Global Conference)において、科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy:OSTP)のマイケル・クラツィオス局長(Michael Kratsios)が科学技術分野での国際競争力強化に向けた政府の推進・保護戦略について説明したと報じた。これによると、政府全体の枠組みにより、人工知能(AI)や量子情報科学、原子力、バイオテクノロジーなどの重要技術分野へ年間1,500億~1,700億ドル規模の研究開発(R&D)資金を優先配分するという。また、その際に障壁となる不要な規制を撤廃し、政府機関への先端技術導入も進め、民間及び公共部門双方での技術の実利用を拡大させるとした。さらに、開発した技術を同盟国と共有することの重要性にも言及し、国内外での技術エコシステム確立に意欲を見せつつも、対中国・ロシアなどへの厳格な輸出管理を通じた知的財産の保護強化が課題とも言及した。同局長は「真の科学(real science)」の重要性について指摘し「自由な仮説検証を妨げる干渉を排する」と政治と一線を画す姿勢も示した。 NEXTGOV/FCW “Inside OSTP’s ‘promote’ and ‘protect’ science and tech strategy” (05/05/25) https://www.nextgov.com/emerging-tech/2025/05/inside-ostps-promote-and-protect-science-and-tech-strategy/405063/?oref=ng-skybox-hp

DARPA 、AIによる数学イノベーション「expMath」プログラム開始 

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は5月5日、人工知能(AI)を活用して数学の発見速度を飛躍的に向上させるプログラム「指数関数・数学(Exponentiating Mathematics: expMath)」を開始すると発表した。AIを「共著者」と位置づけ、数学者の研究支援を行うもので、AI技術開発とその効果検証の2分野で進行し、最先端研究の評価指標策定も重要課題とする。具体的には、難解な問題を小さな補題に分解し解析する技術の開発に向け、大規模言語モデルや強化学習、プログラム合成などのアプローチにより従来の個別的かつ限定的な研究スタイルから脱却し、革新的な数学的ブレークスルーを加速させるという。同局は、暗号学や材料科学、流体力学などの分野への波及に加え、先端数学へのアクセスの民主化により数学教育の革新にもつなげたい意向である。現在、同プログラムへの提案を募集しており、詳細はSam.govで公開されている。 DARPA “Math + AI = Tomorrow’s breakthroughs” (05/05/25) https://www.darpa.mil/news/2025/math-ai-tomorrows-breakthroughs

SAF生産能力が急拡大 バイオ燃料の主力に

エネルギー情報局(Energy Information Administration: EIA)は5月6日、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel: SAF)生産能力が2025年に増強され、バイオ燃料の拡大を牽引していると発表した。農業廃棄物などの原料から生産され、石油系ジェット燃料を代替するSAFの生産能力はフィリップス66社(Phillips 66)、ダイヤモンド・グリーン・ディーゼル社(Diamond Green Diesel)などの新規プラント稼働により、日量約30,000バレルに拡大した。月次統計でも2025年2月の生産量は日量約4万4,000バレルと過去最高を更新した。2024年から2025年にかけてその他バイオ燃料生産(再生可能ナフサ、プロパンなどを含む)は倍増し、2026年も20%増加する見通しで、背景には環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)の再生可能燃料基準(Renewable Fuel Standard: RFS)や各種税制優遇など政策的後押しがある。ただ、SAFは全米ジェット燃料消費の2%未満にとどまり、絶対量としては限定的であるという。 EIA “U.S. sustainable aviation fuel production takes off as new capacity comes online” (05/06/25) https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=65204

NIH 研究成果の即時無料公開を2025年7月に前倒し

国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)は4月30日、同研究所が資金提供する研究成果の即時公開を義務付ける新たな「パブリック・アクセス方針(Public Access Policy)」の施行を、当初予定していた2025年12月31日から約5カ月間前倒しし、7月1日から開始すると発表した。これにより、従来最大12か月間認められていた論文公開の猶予期間が撤廃され、成果論文はパブメド・セントラル(PubMed Central)で即時、無料公開されることになる。NIHは米国の生物医学研究のメッカであるが、独立調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)による最近の調査では、科学者が公益のために活動していると強く信じる人は国民の25%にとどまったという。これを受け、ジェイ・バタチャリア所長(Jay Bhattacharya)は、迅速な結果公開が、再現性や一般化が可能な研究の推進にも寄与するとの考えを示し、「透明性を最大化し、公衆の信頼回復の一助としたい」と説明している。 NIH “Accelerating Access to Research Results: New Implementation Date for the 2024 NIH Public Access Policy” (04/30/25) https://www.nih.gov/about-nih/who-we-are/nih-director/statements/accelerating-access-research-results-new-implementation-date-2024-nih-public-access-policy

オークリッジ国立研究所、オクラホマ大学と共同で先端積層造形センターを設立

オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)は5月6日、オクラホマ大学(University of Oklahoma)と戦略的提携を結び、ノーマン市に最先端の積層造形センターを設立すると発表した。両機関の既存施設を基盤とし、航空宇宙および国防ニーズに向けた金属積層造形ソリューションの開発に注力していく。これに伴い、オクラホマ航空宇宙防衛イノベーション研究所(Oklahoma Aerospace and Defense Innovation Institute: OADII)と協働し、金属積層造形、ハイブリッド製造、機械加工、データ分析研究や人材育成などの分野で共同研究を進め、ティンカー空軍基地(Tinker Air Force Base)をはじめとする地域の重要拠点の任務遂行能力向上を支援し、国家安全保障に貢献していく。オクラホマ大学は、OADII とガログリー工学部(Gallogly College of Engineering)を通じて、既存の軍事装備やシステムなどの維持管理や改善を支援し、イノベーション拡大のためのツールと人材を提供していくという。 Oak Ridge National Laboratory “Fact Sheet: President Donald J. Trump Achieves Improved Safety and Security of Biological Research” (05/06/25) https://www.ornl.gov/news/ou-ornl-launch-strategic-collaboration-additive-manufacturing

トランプ大統領、バイオ研究の安全性強化に向けた大統領令に署名

大統領府は5月5日、トランプ大統領が、生物学研究の安全性とセキュリティ向上を目的とした大統領令に署名したと発表した。中国やイランなど監督体制が不十分とされる海外での危険な機能獲得研究(Gain-of-function research)への連邦資金提供を即時停止し、国内の感染性病原体や毒素を用いる研究も安全な管理体制が策定・実施されるまで一時停止する。これに伴い、科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy:OSTP)と国家安全保障担当大統領補佐官(National Security Advisor:NSA)は120日以内に新たな監督基準案を作成する。政府は、現行のデュアルユース研究政策(Dual Use Research of Concern and Pathogens with Enhanced Pandemic Potential:DURC/PEPP)や遺伝子合成スクリーニング枠組みが自己申告性で、実効性に欠けていると指摘し、新型コロナウイルス(COVID-19)や1977年のロシア風邪の原因となった実験室関連の事故発生リスクの低減に向け透明性と安全性を両立した研究監督体制を構築するという。 The White House “OU, ORNL launch strategic collaboration in additive manufacturing” (05/06/25) https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/05/fact-sheet-president-donald-j-trump-achieves-improved-safety-and-security-of-biological-research/