米国アカデミー、科学競争力強化に向けた研究規制の改善策を提言

米国科学・工学・医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine: NASEM)は9月3日、科学競争力の強化に向け、連邦規制を改善する53の政策提案をまとめた新報告書を発表した。報告書は、時代遅れかつ重複する現行規制が研究の生産性を妨げていると指摘しており、改善に向けた基本原則として、省庁間の規制を調和し、研究リスクに応じた段階的な規制や技術活用による効率化の3点を挙げている。具体的には、ヒトを対象とする研究に関する省庁横断的な方針統一や、助成金申請プロセスの一本化、また研究不正行為に関する統一ポリシーの確立や生物兵器に関する研究規制も統一し、簡素化する。また規制環境の監督を強化するために、行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB)内に調整役を創設することも提案した。同アカデミーは、研究者が本来の研究活動に集中できる環境を整え、米国の科学技術におけるリーダーシップを維持することが提言の目的と説明している。 NASEM “New Report Identifies Policy Options to Improve Federal Research Regulations, Bolster U.S. Scientific Competitiveness” (09/03/25) https://www.nationalacademies.org/news/2025/09/new-report-identifies-policy-options-to-improve-federal-research-regulations-bolster-u-s-scientific-competitiveness

GAO、国防総省に契約データの収集改善を提言

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は9月3日、国防総省(Department of Defense)が使用する「その他取引契約(Other Transaction Agreements: OTA)」に関するデータ収集の改善が必要であると発表した。GAOの報告によれば、同省はOTAを使って柔軟な試作品開発を進めるために多くの新規防衛請負業者と連携しているが、試作品から生産への移行における成果を十分に評価できていないことに加え、関連業者によるコスト管理の監督基準が低下するなどのリスクを高める可能性があるという。また、2024年度の同省によるOTA関連の試作品開発プログラムは160億ドルを超えたが、契約が実際に生産に結びついたかを追跡する仕組みが不足しており、この取り組みが実際の現場へどの程度貢献できているかの評価が難しい状況であるという。これを受けGAOは、同省に対し試作品開発契約から生産へ移行する際の標準契約の追跡システムの整備を推奨し、透明性と評価能力の向上を求めている。 GAO ” Other Transaction Agreements:Improved Contracting Data Would Help DOD Assess Effectiveness” (09/03/25) https://www.gao.gov/products/gao-25-107546

NSF、国家AI研究リソース運営センター設立に向け公募開始

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は9月3日、国家人工知能(AI)研究リソース(National Artificial Intelligence Research Resource: NAIRR)を持続可能なプログラムに移行するための国家AI研究資源運営センター(National AI Research Resource Operations Center: NAIRR-OC)設立に資金を提供すると発表した。AI支援に向けた包括的な枠組みや運用戦略、管理体制構築を主導するコミュニティベースのセンター設立に関する提案を募集するもので、具体的には高度なコンピューティング及びデータ資源の統合、ツールへの効率的なアクセスを可能にする一元化されたウェブポータルの立ち上げなどを含む。すでに400以上の研究チームがリソースを利用しているものの、ツールなどが不足していることから、研究に必要な計算やデータ、モデル、研修リソースへのアクセスを拡大する。14の政府機関と28の民間企業、非営利団体の支援を受けるNAIRR確立に向け、同財団は政府のAI行動計画に基づき、AI研究加速に向けた取り組みを推進していくという。 NSF “NSF announces funding to establish the National AI Research Resource Operations Center” (09/03/25) https://www.nsf.gov/news/nsf-announces-funding-establish-national-ai-research

NREL、商業ビルのエネルギー削減策を発表 アイドル時の消費電力に焦点

国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory: NREL)は9月2日、商業ビルの光熱費とピーク時電力需要の大幅削減に向け「コンセント・機器負荷(Plug and Process Load: PPLs)」に関する新たな削減戦略を発表した。PPLsは空調や照明以外の、コンピュータや厨房機器、医療機器などコンセントに接続される全ての機器の電力消費を指し、商業ビル全体のエネルギー消費の約28%を占める。同研究所は特に病院の医療画像機器に着目し、カリフォルニア大学デービス校ヘルス(University of California: UC Davis Health)との共同研究で、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging: MRI)スキャナーが患者をスキャンしていないアイドル状態時にも多大な電力を消費している実態を明らかにした。研究チームは事業者への更なる調査に基づいたPPLs削減に向けたケーススタディの共有や、エネルギー基準への反映といった具体的な道筋の提示に加え、ビルオーナーやエネルギー管理者向けのガイドも公開し、業界全体での取り組みを促している。 NREL “NREL Publishes Strategies To Reduce Energy Costs in Commercial Buildings, Including Hospitals” (09/02/25) https://www.nrel.gov/news/detail/program/2025/nrel-publishes-strategies-to-reduce-energy-costs-in-commercial-buildings-including-hospitals

陸軍、自律走行車の開発加速に向けスタートアップ3社と提携

ディフェンス・ニュース(DefenseNews)は9月3日、陸軍(U.S. Army)が自律走行車両の戦闘編成への迅速な導入に向け、民間ベンチャー企業3社と総額1,550万ドルの契約を締結したと報じた。これらは、オーバーランドAI社(Overland AI)、フォーテラ社(Forterra)、スカウトAI社(Scout AI)で、「無人システム自立化(Unmanned Systems: UxS Autonomy)」プログラムの下、プログラム・エクゼクティブ・オフィサー地上戦闘システム(Program Executive Office Ground Combat Systems: PEO GCS)と協力し、歩兵分隊車両(Infantry Squad Vehicle: ISV)に自律走行システムを統合し、2026年5月までに兵士による実証・評価のための試作品を提供する。同軍は、完全自律走行車両の実現に苦慮してきた経緯を持ち、特にオフロードでの自律走行は業界の予測よりもはるかに開発途上にあるとし、これまでのロボット戦闘車両の購入計画を撤回し、幅広いプラットフォームで機能する自律能力の達成に焦点を移すこととなった。 DefenseNews “Army picks 3 startups to fast-track self-driving squad vehicle” (09/02/25) https://www.defensenews.com/land/2025/09/02/army-picks-3-startups-to-fast-track-self-driving-squad-vehicle/

トランプ大統領、宇宙軍司令部のアラバマ移転を決定

ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)は9月2日、トランプ大統領が宇宙軍司令部(U.S. Space Command)の本部をコロラド州からアラバマ州ハンツビルに移転すると発表したと報じた。バイデン前政権による2023年の決定方針を覆し、ハンツビルを最優先候補としていた空軍(Air Force)の当初案を採用するもので、長年に亘る両州間の激しい誘致合戦に終止符を打つこととなった。大統領はアラバマ州での高い支持率やコロラド州の郵便投票制度への批判に言及し、今回の決定に政治的側面があったことを示唆した。この移転により、アラバマ州に少なくとも1,600人の雇用と多大な経済効果をもたらすと試算される一方で、コロラド州議員らは、本決定が米国の防衛機能を後退させ、数十億ドル規模の損失となると非難し、再考するよう求めている。1980年代に創設された同司令部は、2002年の統合後、2019年第一期トランプ政権下で復活した。宇宙軍(Space Force)とは異なる組織で、ロシアや中国の軍拡を背景に、衛星防衛やミサイル警戒を統括する。 The Washington Post “Trump to move U.S. Space Command headquarters from Colorado to Alabama” (09/02/25) https://www.washingtonpost.com/national-security/2025/09/02/trump-space-command-alabama/

EV充電インフラの信頼性が向上 J.D.パワー調査

調査会社のJ.D.パワー(J.D. Power)は8月13日、電気自動車(EV)の公共充電で非充電訪問(Non-charging visits、充電設備で充電できなかったケース)が過去4年で最低水準となり、充電インフラの信頼性改善が進んでいるとの調査結果を発表した。同社の「2025年米国EV体験公共充電調査(2025 U.S. Electric Vehicle Experience: EVX Public Charging Study)」によると、非充電訪問は前年比5ポイント改善し、14%に減少したという。一方で、直流急速充電(DC fast charger: DCFC)の満足度は前年比10ポイントマイナスの654点(1000点満点)、交流(AC)普通充電(Level 2)は前年比7ポイントマイナスの607点といずれも低下し、特に充電コストに対する不満が顕著となった。地域別では西海岸での非充電訪問率が高く、充電設備の不具合や混み具合に起因したとし、報告書はDCFC拡大だけでなく、信頼性や使いやすさ、コストの改善が重要であると指摘している。テスラ社(Tesla)のスーパーチャージャー(Supercharger)は前年から低下したものの、5年連続で首位を維持した。 J.D. Power “Fewer Failed Charging Attempts Signal Progress in EV Infrastructure, J.D. Power Finds” (08/13/25) https://www.jdpower.com/business/press-releases/2025-us-electric-vehicle-experience-evx-public-charging-study

TVAとENTRA1エナジー社、6GWの小型モジュール炉導入で合意

公共電力供給機関であるテネシーバレー開発公社(Tennessee Valley Authority: TVA)とENTRA1エナジー社(ENTRA1 Energy)は、TVAの管轄区域である南東部7州向けに6か所のENTRA1エナジー・プラント(ENTRA1 Energy Plant)を導入し、最大6ギガワットの新規原子力発電をTVAに供給する合意文書に署名した。この提携により、約450万世帯または60件の新規データセンターへの供給に相当する電力供給が可能になる。ENTRA1エナジー社は、小型モジュール炉(small modular reactors: SMRs)の商業化におけるパイオニアとして、SMRの技術とエンドユーザーの橋渡しをする。同社は、ニュースケール社(NuScale)の戦略的パートナーとして、ニュースケール社のSMRが内部に搭載されたENTRA1エナジー・プラントの導入・資金調達・投資・開発・実行・管理を促進する。本件は、米国史上最大規模のSMR導入プログラムとなる。 Tennessee Valley Authority “TVA and ENTRA1 Energy Announce Collaborative Agreement in Landmark 6-Gigawatt NuScale SMR Deployment Program –Largest in U.S. History” (09/02/25) https://www.tva.com/news-media/releases/tva-and-entra1-energy-announce-collaborative-agreement-in-landmark-6-gigawatt-nuscale-smr-deployment-program–largest-in-u.s.-history

「エネルギー省の気候報告書は科学的信ぴょう性に欠ける」 有力科学者グループ

エネルギー省(Department of Energy)の気候作業グループ(Climate Working Group)が7月下旬に報告書「温室効果ガス排出による米国の気候への影響に関するクリティカルレビュー(A Critical Review of Impacts of Greenhouse Gas Emissions on the U.S. Climate)」を発表した件で、85名以上の気候専門家が同報告書を精査した結果が9月2日に発表された。それによれば、「報告書の内容は偏っており、多数の誤りがあり、政策策定者への情報提供に適切でない」という。専門家は、エネルギー省の報告書はその作成過程に致命的な欠陥があるとして、①意図的に選ばれた反対派による少数のチーム、②ピアレビューや透明性の欠落、③意図的に選択されたエビデンス及び誤引用、④予め決定された結論、を指摘している。 DOEresponseSite “Climate Experts’ Review of the DOE Climate Working Group Report” (09/02/25) https://drive.google.com/file/d/1r3-lNf45sTIuurKYpFUHla5oKrSc3nxV/view

DARPAとニューメキシコ州、量子コンピューティング進展のための枠組みを確立

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency: DARPA)は、量子ベンチマーキング・イニシアチブ(Quantum Benchmarking Initiative: QBI)の一環として、ニューメキシコ州の経済開発省(Economic Development Department)との間で、量子フロンティア・プロジェクト(Quantum Frontier Project)を立ち上げる協定に署名した。DARPAのミッションに整合した量子コンピューティング技術を進展させ、戦略的なサプライズ(驚き)を創出すると共に、国家安全保障にとって重要な経済・産業・科学的価値を高めることに取り組む。QBIは2024年7月に開始されたイニシアチブで、2033年までに実用規模の量子コンピューティング手法の実現が可能かどうかを判断する厳密な確認と検証を行うことを目的とする。本協定は、DARPA及びニューメキシコ州に具体的な資金拠出を求めるものではないものの、成果に応じてそれぞれ4年間で最大6,000万ドルのマッチング拠出を行うことに合意している。DARPAはこれまでに、イリノイ州、メリーランド州と同様のQBI協定を結んでいる。 DARPA “DARPA, State of New Mexico establish framework to advance quantum computing” (09/02/25) https://www.darpa.mil/news/2025/darpa-new-mexico-establish-framework-advance-quantum-computing