世界級の中性子源、大規模な陽子パワー改良のため一時停止へ

オーク・リッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)にある核破砕中性子源(Spallation Neutron Source: SNS)は、世界最強の加速器ベースの中性子源施設であるが、施設改良のため、2024年6月まで計画的な一時停止が行われる。これは、施設の陽子パワー改良(Proton Power Upgrade: PPU)プロジェクトの一部で、その作業の多くは、加速器と、SNSで計画されている第2ターゲット・ステーション(Second Target Station)との間をつなぐコネクターの建設である。完成すると、加速器のビーム・パワーは現行の世界的な1.7メガワットから最高2.8メガワットへ到達する。作業員は、約3,000平方フィートのコンクリート・トンネル、「スタブ(stub)」を新たに取り付け、既存のトンネルと結びつける。このスタブの取り付けは半年以内に完了予定で、その後は新たな部品やシステムを設置して、PPUプロジェクトを完了させる。 Oak Ridge National Laboratory “World-class neutron source takes a break for major Proton Power Upgrade” (9/25/23)

エネルギー省、二酸化炭素排出の加速に3,500万ドルを発表

エネルギー省(Department of Energy)の化石エネルギー及び炭素管理局(Office of Fossil Energy and Carbon Management: FECM)は9月29日、航空や輸送、レガシーとなっている二酸化炭素汚染などの炭素削減が困難な部門で、炭素を直接大気から排除する技術の進展を目的として、最高3,500万ドルを提供すると発表した。これは「二酸化炭素排除購入パイロット・プライズ(Carbon Dioxide Removal (CDR) Purchase Pilot Prize)」と呼称され、企業が二酸化炭素排除のクレジットを直接エネルギー省へ売却する機会を巡って競争する。これは、優れた二酸化炭素排除プログラムのための標準を構築し、技術イノベーションと産業の成長を奨励する市場を作る一助となるだろう。本プライズは、連邦政府が二酸化炭素排除クレジットの顧客となり、複数の段階にわたって最高品質の二酸化炭素排除技術を提供する商業企業を支援するという、連邦政府としては初めての取り組みとなる。プライズでは、①直接空気回収及び貯留、②バイオマス及び炭素排出と貯留など、4つの二酸化炭素排除手法を対象として、連邦政府とのオフテイク協定という形態で最高3,500万ドルの賞金が提供される。 Department of Energy “DOE Announces $35 Million to Accelerate Carbon Dioxide Removal” (9/29/23)

エネルギー省、先住民コミュニティにおけるクリーンエネルギー技術導入に3,800万ドルを発表

エネルギー省(Department of Energy)は9月28日、米国先住民及びアラスカ先住民のコミュニティにおけるクリーンエネルギー技術の導入を進展させることを狙いとした13件のプロジェクトに3,800万ドルの資金を提供すると発表した。この資金は、先住民コミュニティを対象に、エネルギー費用を削減及び安定化させ、エネルギーの安全保障と対応力を強化し、電力を提供するための継続的な取り組みを後押しする。これらの投資は、部族のエネルギー主権を強化しつつ、公平なクリーンエネルギーの未来を達成するというバイデン政権の目標へと近づく一歩となる。これらのコスト分担型プロジェクトは総額約5,500万ドル規模で、9.6メガワット以上の新たなクリーンエネルギー発電と、2,600メガワット時以上の電池貯留をもたらし、1,300以上の部族の建造物に影響し、システム全体を通じて1億2,500万ドル以上の節約をもたらすと試算されている。 Department of Energy “U.S. Department of Energy Announces $38 Million to Deploy Clean Energy Technology in American Indian and Alaska Native Communities” (9/28/23)

エネルギー省、国内の州及び部族にグリッド対応力強化のため1億6,700万ドル以上を提供

エネルギー省(Department of Energy)は9月28日、「グリッドの対応力に関する州政府と部族向け公式グラント(Grid Resilience State and Tribal Formula Grants)」の第8次コホートとして、11の州と2つの準州、20の部族国家が、合計1億6,770万ドルを受益すると発表した。超党派インフラ法(Bipartisan Infrastructure Law)からの支援を受け、これらのグラントは、電力グリッドの現代化を支えつつ、電力部門の信頼性を確実にする一助となる。申請プロセスの一環として、州や準州、部族国家は、グラント実践に関する総合的な目標を提示する。受益者の一例として、アリゾナ州は、「電力混乱の頻度と時間を削減するため、電力グリッドの信頼性と対応力の強化に取り組む。特に、混乱に不均衡な影響を受ける地域を重点的に取り組む。グラント資金はまた、マイクログリッドの推進や、先端制御センサー技術の導入など、対応力投資プロジェクトの進展にも充当される」(受益金額1,300万ドル)となっている。 Department of Energy “Biden-Harris Administration Delivers More Than $167 Million in Grid Resilience Formula Grants to States and Tribes Across the Country” (9/28/23)

エネルギー省、地層水素に関する二国間関与を初めて実施

現在、地下には大規模な地層水素が存在する可能性が高いと考えられている。もし、水素を低費用かつ大規模に生産できることが証明されれば、全く新しい炭素フリーのエネルギー源となる可能性があり、エネルギー移行が加速される可能性がある。これは、水素に関する概念が「単なるエネルギー担体」から、「主要なエネルギー資源」へと大きくシフトする可能性があることを示す。この可能性が、エネルギー高等研究局(Advanced Research Projects Agency-Energy: ARPA-E)による地層水素の可能性に関する研究公募の根拠である。エネルギー省(Department of Energy)の国際事案局(Office of International Affairs)は、オマーンのエネルギー・鉱物資源省(Ministry of Energy and Mineral Resources: MEM)と提携し、オマーンで9月24日、「米国=オマーン 地層水素に関する技術作業部会(U.S.-Oman Technical workshop on Geologic Hydrogen)」を実施した。更に、MEMと、ARPA-Eの受益者であるエデン社(Eden)が、オマーンにおける地層水素の探索及び生産に関する覚書(Memorandum of Understanding: MOU)に署名した。オマーンの独特な地層は、地層水素の大規模な商業生産の可能性を証明または反証する上で期待の高まる試験台となる。 Department of Energy “Department of Energy Convenes First Ever Bilateral Engagement on Geologic Hydrogen” (9/29/23)

研究博士号授与が回復し、2022年の米国博士号取得者数は過去最高に

新型コロナのパンデミックは研究博士号学位の取得に否定的な影響をもたらしたが、「博士号取得者調査(Survey of Earned Doctorates: SED)」の新たなデータによれば、博士号の授与は回復しつつある。2022学業年度(2021年7月1日~2022年6月30日)のデータは、研究博士号の授与数が単一年度としては過去最高の5万7,596件に達したことを示す。卒業の延期や博士号取得の要件に伴うその他の混乱が、この増加に寄与しており、2022年の博士号取得者の半数以上(女性の54.0%、男性の53.1%)が、「パンデミックは博士課程のスケジュールに遅延をもたらした」と報告している。SEDの新たなデータはまた、2021年から2022年の間に、学術部門での雇用のコミットメントを得た博士号取得者の割合は、3.7ポイント下落した一方、民間部門での職を得た同割合は4.4ポイント上昇した。ただし、パンデミックが米国の大学における研究博士課程やその取得者に及ぼした影響を十分に理解するには、更に数年分のデータが必要である。 National Center for Science and Engineering Statistics “Research Doctorate Conferrals Rebound, Leading to Record Number of U.S. Doctorate Recipients in 2022″ (9/28/23)

ARPA-H、新規の癌診断・治療技術開発を目指す

バイデン政権は9月26日、医療高等研究計画局(Advanced Research Project Agency for Health: ARPA-H)との合意の下、癌の検知及び治療に関する急進的で新しい手法の開発に取り組む3件の主要プロジェクトが開始されると発表した。これらの研究プロジェクトは、「癌ムーンショット(Cancer Moonshot)を支援する」というARPA-Hのコミットメントを示す。3件の受益プロジェクトのうち、2件は、癌治療の新しい方法の開発に取り組む。ライス大学(Rice University)(テキサス州)は、腹膜腫瘍や固形腫瘍における癌治療反応率を高める画期的な手法として「的を絞ったハイブリッド式癌治療調整(Targeted Hybrid Oncotherapeutic Regulation: THOR)」プラットフォームの開発を模索する(最高4,500万ドルを受益)。また、ミズーリ大学コロンビア校(University of Missouri in Columbia)が主導するチームは、腫瘍をターゲットとするために選出されたバクテリアを使った廉価で安全な治療の開発を目指す(最高1,900万ドル)。更に、もう1件のプロジェクトは、ジョージア工科大学(Gerogia Institute of Technology)が主導する「癌と臓器のデグラドーム・アトラス(Cancer and Organ Degradome Atlas: CODA)」プロジェクトで、病気の癌細胞における独特な細胞的特徴を理解することを目指す(オプションを含めて最高5,000万ドル)。 Advanced Research Project Agency for Health “ARPA-H projects aim to develop novel cancer technologies” (9/26/23)

ARPA-H、全国医療イノベーション・ネットワークを始動

厚生省(Department of Health and Human Services: HSS)傘下の医療高等研究計画局(Advanced Research Project Agency for Health: ARPA-H)は9月26日、3つのARPA-H地域ハブを中心とする全国的な医療イノベーション・ネットワーク、「ARPANET-H」の始動を発表した。ミッションに焦点を当てた地域センターがハブとなり、多様な人々、状況、米国医療エコシステムの能力を示す国内のスポーク・ネットワークで構成される。「ハブ&スポークのモデルを使用することで、それ以外の方法では達成が難しい効率性を生み出すことができる。具体的にはより広く患者や提供者、その他の関係者へ早急にアクセスできることなどが含まれる」と、ARPA-Hのレニー・ウェグリジン長官(Renee Wegrzyn)は述べる。ハブとなる拠点とフォーカス・エリアは次の通り。①テキサス州ダラス(顧客経験の合理化)、②マサチューセッツ州ケンブリッジ及びグレーター・ボストン地域(投資家の促進)、③米国首都圏地域(拠点は今後決定)(関係機関及び運営)。 Advanced Research Project Agency for Health “ARPA-H launches nationwide health innovation network” (9/26/23)

ARPA-H、抗生物質耐性への対策を狙いとしたアワードを発表

厚生省(Department of Health and Human Services: HSS)傘下の医療高等研究計画局(Advanced Research Project Agency for Health: ARPA-H)は9月28日、抗生物質耐性菌の増大する脅威に対処する新たなプロジェクトを発表した。細菌感染症は依然として、世界中で大きな死亡原因の一つであり、米国内では毎年、280万件以上の抗生物質耐性菌感染症事案が生じており、35万人が死亡している。さらに、こうした感染により入院日数の長期化や、医療費の増加などが生じている。こうした危機への対策として、ARPA-Hは、オープンな広範な官庁公示(Open Broad Agency Announcement: Open BAA)を通じて、「変革的なソリューションで抗生物質耐性を打破する(Defeating Antibiotic Resistance through Transformative Solutions: DARTS)」プロジェクトに資金を提供する。DARTSは、一連の診断及び実験的プラットフォームの開発に焦点を当て、抗生物質耐性がどのように始まるのか、新たな抗生物質の模索、感染患者にリアルタイムで処方する適切な抗生物質の早急な特定に関する洞察を得る。ハーバード医薬大学院(Harvard Medical School)が主導する多機関の研究チームが本プロジェクトの下、最高1億400万ドルを受益する。 Advanced Research Project Agency for Health “ARPA-H award aims to combat antimicrobial resistance” (9/27/23)

ARPA-H、臓器移植不足問題への対処を踏み出す

厚生省(Department of Health and Human Services: HSS)傘下の医療高等研究計画局(Advanced Research Project Agency for Health: ARPA-H)は9月28日、オープンな広範な官庁公示(Open Broad Agency Announcement: Open BAA)の一環として、3D印刷で本格的に機能する人体臓器の開発へ向けた土台作りに取り組むプロジェクトに、最高2,600万ドルを提供すると発表した。現在、米国には、心臓や肝臓などの臓器移植を待つ患者が10万人以上いるが、適合臓器へのアクセスがないために、毎年6,000名以上が亡くなっている。また、移植のための角膜や皮膚、軟骨などの細胞を必要とする米国民も数百万人いる。ARPA-Hは、「再生細胞印刷を通じた進展を実現する医療(Health Enabling Advancements through Regenerative Tissue Printing: HEART)」プロジェクトを開始し、この深刻な溝の対処に画期的な一歩を踏み出す。目標は、オンデマンドによる3D印刷臓器で、最初に人間の心臓に取り組む。スタンフォード大学(Stanford University)の研究者が、細胞の純度向上や、3Dバイオ印刷速度の加速、コンピュータモデルや細胞成熟手法の進展に取り組み、オンデマンドの臓器印刷の実現を目指す。 Advanced Research Project Agency for Health “ARPA-H award takes step to address organ transplant shortages” (9/28/23)