NSF、中小企業支援プログラムを再開 科学機器に重点投資 

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は5月28日、スタートアップや中小企業を支援する「中小企業イノベーション研究・中小企業技術移転(Small Business Innovation Research: SBIR/ Small Business Technology Transfer: STTR)」プログラム再開に向け、2億5,000万ドルを投じると発表した。また、同予算内で次世代科学機器開発を対象とした4,000万ドルの新規実証事業も立ち上げる。連邦助成による研究から誕生した開発初期段階のディープテック(先端技術)企業に対し、株式希薄化を伴わない資金提供で商業化を後押しするプログラムで、革新的な実験基盤や先進科学設備など、新しい科学的発見の領域を切り拓くインフラ技術へ投資する。公募に関してはフェーズⅠ、Ⅱなどの段階があり、起業家はまず、事業ピッチを提出して適合性の審査を受ける必要がある。NSFは2016年度~2025年度の間に1,600社以上に20億ドル以上を投じており、民間から約380件の出口戦略(エグジット)を含む360億ドルの民間投資を調達している。 NSF “NSF deploys $250 million to restart Small Business Innovation Research & Small Business Tech Transfer programs, including a new $40 million pilot emphasis on next-generation scientific instrumentation” (05/28/26) https://www.nsf.gov/tip/updates/nsf-deploys-250-million-restart-small-business-innovation

エネルギー省、データセンターの電力変動監視 官民で供給対策を強化 

エネルギー省(Department of Energy)は5月28日、人工知能(AI)の急拡大に伴う大型データセンターの電力需要急増を受け、送電網の信頼性に影響する独特の電力変動(Oscillation、オシレーション)を効果的に監視・検知するための技術報告書を発表した。AI学習センターでは従来施設と異なり、数千個の半導体を並列に設置して同期稼働するため、周期的な電力負荷の変動が発生する。これが幅広い周波数に影響し、結果的に近隣の発電設備を妨害するリスクがあるという。報告書を作成した同省傘下の同期電力計測器イニシアチブ(Novel Applications for Synchronized Power Instrumentation: NASPI)は最も有効な解決策として、従来の位相計測装置(Phasor measurement units: PMU)による低周波振動検出と、高精度波形記録(Point-on-wave: POW)による高周波検知を併せたハイブリッド型監視を提言した。これに対し同省は、関連機関と連携し、安全かつ効率的な送電網統合を進め、電力の安定供給を確保していく方針を示している。 Department of Energy “Monitoring Oscillations from Large Data Centers” (05/28/26) https://www.energy.gov/oe/articles/monitoring-oscillations-large-data-centers

化学研究で中国が圧倒的シェア、全体の過半数に ネイチャー誌

ネイチャー誌(Nature)は5月20日、主要学術誌掲載などによる論文貢献度を示す「ネイチャー・インデックス(Nature Index)」の化学分野において、中国のシェアが全体の半数以上を占め、同分野における圧倒的な優位性が浮き彫りになったと報じた。2025年のデータ(24年9月〜25年8月)によると、世界全体の化学論文発表における中国が占める割合は53%に達した一方、2位の米国は15%にとどまった。また、各国の全研究成果における化学関連分野の割合は、米国が約25%を占めたのに対し、インドは60%近くに達した。中国も50%を超える結果となり、国による研究資源の集中度に差が見られたという。一方で、フランスは70%を超える最も高い国際共同論文率となった。これに対し、中国は単独での研究力が際立ち、国際共同割合が最も低い結果となった。 Nature “Nearly half of the world’s Nature Index chemistry research is now done in China” (05/20/26) https://www.nature.com/articles/d41586-026-00431-0

宇宙産業、上流工程における対中依存に懸念 オルタナ社

サプライチェーン情報企業のオルタナ社(Altana)は5月20日、国内民間宇宙産業の供給網を分析した結果、中国やロシアなどの敵対国への依存が、把握の難しい下請けの「第3階層(Tier3)」以降の上流工程に集中していると発表した。宇宙産業は国防総省(Department of Defense)事業やメガコンステレーション拡大による調達圧力を受けており、人工知能(AI)を活用した分析では、2022年以降の輸入実績のうち84万9,000件以上で中国製部品、1万5,000件でロシア製部品の関与が確認された。特に人工衛星用の耐放射線半導体や特殊ゴム・金属などの部品など代替困難な中核部品ほど依存度が高いという。また、宇宙システムを制御する先端半導体の26.8%が台湾製で、地政学的衝突による供給途絶のリスクが浮き彫りとなった。こうした中、国防機関は民間と連携し、AIを用いた複数階層の供給網可視化や有事シミュレーションを通じた脆弱性対策を強化しているという。 Altana “Adversarial Dependencies Hidden Deep in U.S. Space Industrial Base Threaten Resilience and Readiness” (05/21/26) https://altana.ai/resources/space-industrial-base-resilience 参照記事: SpaceNews “Report finds U.S. space supply chains rely heavily on Chinese manufacturing” (05/20/26) Report finds U.S. space supply chains rely heavily on Chinese manufacturing

次世代地熱発電、国内主力電源への可能性も ITIF報告

情報技術イノベーション財団(Information Technology & Innovation Foundation: ITIF)は5月18日、地熱増産システム(Enhanced Geothermal Systems: EGS)などの次世代技術台頭により、地熱発電が国内主力電源となる可能性があるとする報告書を発表した。データセンターや人工知能(AI)、製造業の国内回帰に伴い電力需要が急増する中、天候に左右されない24時間稼働のクリーンなベースロード(基幹)電源として地熱への期待が高まっている。報告書は地下深部の高温岩体を破砕するEGSや、閉鎖ループ式の先進地熱システム(Advanced Geothermal Systems: AGS)、また超高温岩体地熱(Superhot Rock Geothermal: SHR)の3技術を紹介しており、EGSではフェルボ・エナジー社(Fervo Energy)が商用規模の発電に成功し、採掘期間も2年間で70%短縮したと触れた。こうした次世代技術は、現政権や超党派支持を得ているほか、市場需要とも一致しているとし、ITIFは規模拡大に向け連邦融資や研究開発拡充や国有地へのアクセス改善を提言している。 ITIF “Advanced Geothermal Energy Is Widely Available, Clean, and Maybe Cheap Enough to Make a Big Impact” (05/18/26) https://itif.org/publications/2026/05/18/advanced-geothermal-energy-widely-available-clean-maybe-cheap-enough/

米国、対中研究連携の全面禁止法案を審議

サイエンス誌(Science)は5月27日、連邦議会に今月提出された「敵対勢力からのイノベーションと研究保護(Securing Innovation and Research from Adversaries: SIRA)法案」により、米国の研究者と政府のブラックリストに掲載された中国機関に所属する科学者による連邦資金を用いた共同研究の全面的禁止が提案されていると報じた。法案は論文の共同執筆やデータ共有、共同での学生指導などを禁止対象とし、リストには軍民融合戦略に関わる中国の大学や病院などが含まれている。法案共同提案者のジョン・ムーレナー下院議員(John Moolenaar、ミシガン州選出共和党)は、中国共産党が学術の開放性(オープンアクセス)を利用して機微技術を獲得し、軍事力を強化していると主張する一方、民主党などの反対派は、広範すぎる規制が正当な研究を萎縮させ、知見や人材の流入を絶つことにつながり、逆に米国の競争力を損なうことになると反発した。科学界は、研究安全保障を支持しつつも、禁止分野の明文化を求めている。 Science “Lawmakers propose banning all U.S.-Chinese research collaborations” (05/27/26) https://www.science.org/content/article/lawmakers-propose-banning-all-u-s-chinese-research-collaborations

電動航空機、認証や空港インフラに課題 GAO報告

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は5月27日、次世代の航空輸送に向け開発が進む電動航空機について、連邦航空局(Federal Aviation Administration: FAA)による安全認証プロセスの標準化や、国内空港における充電インフラの整備といった長期的な規制アプローチが必要であるとする報告書を発表した。完全電動やハイブリッド式の機体は、運航コストの削減や騒音低減、地方空港でのサービス拡大につながると期待されており、空飛ぶタクシー(エアタクシー)や貨物輸送など幅広い用途での利用が見込まれている。その一方で、FAAによる商用運航の型式認証はまだなく、現在は個別審査にとどまっている。背景には電動推進分野の専門知識を持つFAA職員の不足や認証プロセス標準化の遅れがあるという。また、国内空港での充電インフラ設置計画は限定的で、コストや需要の不確実性、電力の安定確保が課題となっており、GAOは技術変化への対応に向け、専門人材のスキルギャップ評価を定量的かつ計画的に進めるよう提言している。 GAO “Electric Aircraft: FAA Is Evaluating Designs for Certification and Considering Long-Term Regulatory Approaches” (05/27/26) https://www.gao.gov/products/gao-26-107816

製造業基盤強化へ大規模投資を 貿易依存回避に向け、MGI試算

マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(Mckinsey Global Institute: MGI)は5月21日、地政学的な分断が進む中、米国が主要戦略物資の輸入依存を解消して国内生産を拡大するには、約2兆ドル(国内総生産の約6%相当)の産業基盤構築コストが必要であるとする報告書を発表した。かつて世界最大であった米国の生産量が現在、中国の4分の1にとどまっていることから、MGIは年間3兆ドルの工業製品輸入のうち、安全保障上の重要性や供給の集中度から「アキレス腱」となる製品を約25%と特定した。主にコンピューターや電子部品で、これらの国内自給には平均2倍、人工知能(AI)サーバーでは10倍以上の増産率が必要になると試算している。また、既存工場のフル稼働だけでは脆弱性を解消できないため、資金確保だけでなく、専門技能を持つ人材の育成、インフラ整備やエネルギー供給、実効性のある事業性の確立といった広範な基盤刷新が不可欠とし、戦略的な優先順位付けと取捨選択を提言している。 Mckinsey Global Institute ” Ramping up manufacturing in America?” (05/21/26) https://www.mckinsey.com/mgi/our-research/ramping-up-manufacturing-in-america 参照記事: Axios “What it would take to rebuild U.S. manufacturing might” (05/27/26) https://www.axios.com/2026/05/27/us-manufacturing-china-imports

量子コンピューター技術開発を最優先課題に CNAS提言

新米国安全保障センター(Center for a New American Security: CNAS)は5月26日、高付加価値をもたらす次世代技術の主導権維持に向けた戦略的投資を優先すべきとする報告書を発表した。この中で、量子コンピューティングの規模拡大に不可欠なデータセンター内のモジュール式量子相互接続を最優先課題と指摘し、量子ネットワーク分野の米中競争下での重要側面と位置付けている。実用化により創薬、材料科学、暗号解読などの先端技術変革につながるとし、既に量子センサーは高精度航行、監視などの軍事用途への導入が進んでいる一方、中国が先行する第一世代の量子暗号鍵配給(Quantum Key Distribution: QKD)については、実用上の限界から限定的な補完にとどまると指摘した。その上で政府に対し、プログラム重複を回避しつつ、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)などの事業拡張を通じた相互接続技術の加速や供給網の確保、耐量子計算機暗号(Post-quantum cryptography: PQC)への移行促進を提言している。 CNAS “The Entanglement Edge” (05/26/26) https://www.cnas.org/publications/reports/the-entanglement-edge

NASA、月面基地向け探査機・着陸機に関する最新情報を発表

米航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration: NASA)は5月26日、月面探査機及び月面行きの無人貨物着陸機に関する新たな契約と、月南極地域(lunar South Pole region)での最初の月面基地インフラ及び探査ミッションについて、打ち上げ目標時期と主要マイルストーンを発表した。NASAによれば、月面基地に関する最初の3件のミッションは、①ムーンベースI(Moon Base I)(2026年秋以降の打ち上げが目標。ブルーオリジン社(Blue Origin)のブルー・ムーン・マーク1・エンデュランス(Blue Moon Mark 1 Endurance)着陸機を使用してNASAのペイロード(搭載物)を月面へ輸送)、②ムーンベースII(今年後半の打ち上げが目標。1,100ポンド以上のペイロードをアストロボティック社(Astrobotic)のグリフィン(Griffin)着陸機で輸送)、③ムーンベースIII(年内の打ち上げが目標。月面ペイロード及び研究調査(Payloads and Research Investigations on the Surface of the Moon)イニシアチブを通じて選出された最初のペイロードを搭載して飛行)、となっている。ミッションは今後も追加で発表される。 NASA “NASA Provides Update on Moon Base Rovers, Landers, Missions” (05/26/26) NASA Provides Update on Moon Base Rovers, Landers, Missions