電池イノベーションの中央データ・ハブとなる「電池データ・ゲノム」構想

1990年代、研究者はヒトゲノム・プロジェクト(Human Genome Project)に取り組んだ。13年間をかけて行われたこのプロジェクトは、医薬業界に変革をもたらし、数えきれないほどのブレイクスルーにつながった。現在、研究者はこのイノベーション・モデルを電池科学へと広げ、世界的規模での影響を視野に入れている。エネルギー省(Department of Energy)傘下のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)とアイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory)の研究者が主導する国際コンソーシアムは最近、「電池データ・ゲノム(Battery Data Genome)」と呼ばれる新たな包括的データ科学パラダイムの創出を提案した。これは、広範な電池コミュニティで同一のデータ入手及びデータ共有慣行を開発していくという野心的な事業である。電池データ作業を標準化することで電池開発のスピードアップにつながることが期待されている。 Argonne National Laboratory “Envisioning the Battery Data Genome, a central data hub for battery innovation” (10/5/22)

CSIS、報告書「半導体製造の復活:労働力問題に対応」を発表

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies: CSIS)は今般、「半導体製造の復活:労働力問題に対応(Reshoring Semiconductor Manufacturing: Addressing the Workforce Challenge)」と題する報告書を発表した。8月に成立した「2022年CHIPS及び科学法(CHIPS and Science Act of 2022)」(通称CHIPS法)は、大幅な連邦支出や税制優遇措置を通じて米国内の半導体のサプライチェーンを強化し、国内半導体製造施設への投資を奨励する。これを受けて半導体メーカー大手6社が米国内の半導体製造工場への投資を発表し、米経済に朗報をもたらしているが、これは、新工場の建設に必要な建設労働者と、工場を運営する適格労働者の不足という大きな試練をもたらしている。こうした人材不足は、米国だけでなく、世界的な懸念となっている。CSISは、こうした状況を踏まえた上で、「半導体の人材不足は世界的に深刻な問題だが、米国は、自国の資産や資源を有効活用できれば、比較的優位な位置づけにある」と、指摘する。 Center for Strategic and International Studies “Reshoring Semiconductor Manufacturing: Addressing the Workforce Challenge” (10/6/22)

インテル社、自社のチップ工場を学術機関へ開放へ

インテル社(Intel)は、自社のチップ工場を学術機関へ開放し、研究者が物理的なチップに直接触れることができるようにする。最終的な目標は、半導体の研究開発を後押しすることである。これは、「大学シャトル・プログラム(university shuttle program)」と呼ばれ、公的及び教育的な機関に、「講義や訓練、人材開発のための現代技術」へのアクセスを提供するものである。アップル社(Apple)など潤沢な資金を持つ大手チップ設計企業は、チップ不足の際も、台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.: TSMC)などの工場で製造ラインを支配することができたが、人工知能(AI)のチップメーカーなど小規模なチップ企業は、資金が限られ、チップ不足の際に製造を確保することができない。インテル社のプログラムはこうした問題を軽減することを狙いとし、数多くの小規模な発注を組み合わせて同社の工場で1つのバッチとして製造できるようにする。これには大学教授や学生が設計したチップのプロトタイプも含まれる可能性がある。インテル社のパット・ゲルシンガー最高経営責任者(Pat Gelsinger)は、「我々は未来の人材パイプラインを構築したい。こうした機関と協力しながら、半導体人材の流入を大幅に高めていく」と述べる。 HPC Wire “Intel Is Opening up Its Chip Factories to Academia” (10/6/22)

国防総省、科学技術プログラムの保護努力支援として、「技術及びプログラム保護ガイドブック」を発表

国防総省(Department of Defense)は10月4日、「技術及びプログラム保護ガイドブック(Technology and Program Protection (T&PP) Guidebook)」を出版したことを発表した。このガイドブックは、エンジニアや管理者に、DOD説明5000.83(DOD Instruction (DoDI) 5000.83)「技術的優位性を維持するための技術及びプログラム保護(Technology and Program Protection to Maintain Technological Advantage)」の実践に関するガイダンスを提供するもので、国防調達ガイドブック(Defense Acquisition Guidebook: DAG)の9章(Chapter 9)「プログラム保護(Program Protection)」に代わるものである。 Office of the Under Secretary of Defense, Research and Engineering “The Department of Defense Releases Technology and Program Protection Guidebook to Assist Science and Technology Program Protection Efforts” (10/4/22)

大統領府、二酸化炭素輸送インフラの資金として超党派インフラ法から20億ドルを発表

エネルギー省(Department of Energy)は10月6日、「二酸化炭素輸送インフラ融資及びイノベーション(Carbon Dioxide Transportation Infrastructure Finance and Innovation: CIFIA)」プログラム(21億ドル)の下、融資を希望する申請者からの書簡(letter of interest)の受付を開始した。CIFIAプログラムは、超党派法(Bipartisan Infrastructure Law)の下で実施され、米国内の大規模な二酸化炭素共通輸送プロジェクトへ資金を提供する。人為的な炭素源と、貯留もしくは活用のための終点とを結ぶパイプラインや鉄道、船舶、荷船、陸上輸送などによる共通のインフラ・プロジェクトを支援する。対象は、直接空気回収(ダイレクト・エアー・キャプチャー、Direct Air Capture: DAC)や、工業及び発電所からの炭素捕獲など、炭素管理技術が、今後数十年間に大規模に導入されるプロジェクトでなくてはならない。 Department of Energy “Biden-Harris Administration Announces $2 Billion from Bipartisan Infrastructure Law to Finance Carbon Dioxide Transportation Infrastructure” (10/6/22)

世界の国々、2050年までに飛行機による排出を削減することで合意

世界の国々は10月7日、約十年に及ぶ協議を経て、世界の飛行機による地球温暖化ガスの排出を2050年までに劇的に減少させることに合意した。急成長する航空分野における気候への影響を緩和する取り組みにおいて、大きな節目となる。「正味ゼロ」排出の実現には、航空業界による気候対策の抜本的な強化が必要となる。企業による取り組みはこれまで、植樹プログラムや、大気からの二酸化炭素の抽出といういまだ証明されていない技術を通じて、航空業界の排出を相殺するという策が中心であった。正味ゼロ排出を実現するには、企業と政府が、エネルギー効率に優れた機体やよりクリーンな燃料に数千億ドルの投資を行うことが必要となるが、それだけでは不十分だろう。航空業界による排出対策は遅々としており、同業界はパリ気候協定(Paris accord)の対象にはなっておらず、国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization)と呼ばれる組織が気候協議を監督している。 New York Times “Nations Agree to Curb Emissions From Flying by 2050” (10/7/22)

地球システム・グリッド連盟、気候予測データ・システムを改良する取り組みを開始

地球の気候の重要な予測に使用されるデータを収集、配信する省庁間イニシアチブ「地球システム・グリッド連盟(Earth System Grid Federation: ESGF)」は、データの利便性を高め、より迅速に利用できるようにし、情報を収集・整理する方法を向上させるための一連の改良へ向けた準備を進めている。ESGFは、エネルギー省(Department of Energy)傘下のオーク・リッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)が主導し、アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)及びローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)との共同作業で進められている。世界気候研究計画(World Climate Research Programme)の結合モデル相互比較プロジェクト(Coupled Model Intercomparison Projects)に取り組む科学者によって地球の将来の気候予測が行われており、ESGFのデータはその重要な要素の一部となっている。 Oak Ridge National Laboratory “Earth System Grid Federation launches effort to upgrade climate projection data system” (10/5/22)

マイクロン社、ニューヨーク州内の半導体工場に最高1,000億ドルを誓約

マイクロン社(Micron)は10月4日、ニューヨーク州北部に大型半導体工場を建設するため、今後20年間で最高1,000億ドルを支出する計画であると発表した。マイクロン社による誓約は、連邦政府による誘致と寛大な包括的インセンティブが、企業の投資判断を決定する助けとなっていることを示す。8月に可決された「2022年CHIPS及び科学法(CHIPS and Science Act of 2022)」(通称CHIPS法)は、米国内で半導体工場を建設及び拡大する企業に520億ドルのグラントと助成金を提供する。「CHIPS法がなければ、今日、我々はここにない」と、マイクロン社の最高経営責任者であるサンジャイ・メフロトラ氏(Sanjay Mehrotra)は言う。法律や税制優遇措置、ニューヨーク州などの州政府とのパートナーシップは、アジア諸国が提供する助成金と競合し、半導体製造を米国に回帰させるための主要原材料であると、同氏は述べる。専門家は、「業界のために政府が介入することは国家経済にとって重要な役割とみなされることがある」と指摘する。その一例として、日本政府による自動車やメインフレーム・コンピューター、半導体業界への支援、中国によるハイテク分野支援が挙げられる。 New York Times “Micron Pledges Up to $100 Billion for Semiconductor Factory in New York” (10/4/22)

フェルミ国立加速研究所、環境志向を推進する新たな研究センター新設

エネルギー省(Department of Energy)傘下のフェルミ国立加速研究所(Fermi National Accelerator Laboratory)で、同研究所を代表する16階建ての建物、ウィルソン・ホール(Wilson Hall)の横に新たな建造物がある。ガラス張りの正面入り口が特徴的な「総合工学研究センター(Integrated Engineering Research Center: IERC)」がそれで、フェルミ国立加速研究所全体で行われている持続可能性推進の取り組みの礎の一つである。建築が完成すると、IERCは、ウィルソン・ホールが1974年に建設されて以来、同研究所で最大の専用ラボ及びオフィス・ビルとなる。8万平方フィートのIERCの建設は約10年に及び、間もなく完了する予定である。IERCは、フェルミ国立加速研究所のキャンパス基本計画から生まれたものである。同計画は、持続可能性や管理(stewardship)を含む一連の理念に基づいて計画されている。IERCは、フェルミ国立加速研究所が環境面のゴールへと進む勢いをもたらす建物となることが期待されている。 Fermi National Accelerator Laboratory “New research center raises bar in Fermilab’s mission to go green” (10/6/22)

NSF、オープン・ソース・プロジェクトの最初のコホートに約800万ドルを投資

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は、「オープン・ソース・エコシステムを実現するパスウェイ(Pathways to Enable Open-Source Ecosystems: POSE)」プログラムの最初のアワードとして、20件以上のフェーズIプロジェクトに約800万ドルを投資すると発表した。研究者は、マテリアル科学研究や再生可能エネルギーの採択、自然災害、医療データ科学及び情報科学、サプライチェーンの監視、その他の数多くの重要な応用のためのエコシステムの創出に取り組む。POSEは、NSFの技術・イノベーション・パートナーシップ総局(Directorate for Technology, Innovation and Partnerships: TIP)が開始し、その他の全ての総局の支援を受けて行われ、社会的、経済的、技術的に重要な問題への新たな技術ソリューションを創出する上で、オープン・ソース開発のパワーを育成することを狙いとしている。 National Science Foundation “NSF invests nearly $8 million in inaugural cohort of open-source projects” (9/29/22)