Month:May 2026
NSF「技術アクセラレータ構想」を開始 先端技術の市場投入を加速
米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は5月27日、基礎研究の成果を商用化し、経済強化と安全保障向上を目指す「NSF技術アクセラレータ(NSF Tech Accelerators)」イニシアチブを開始したと発表した。研究を実用化するまでの、いわゆる「死の谷(Valley of death)」克服に向け、民間投資が不足しがちなディープテック(先端技術)領域に特化し、専門知識と商業化支援を提供する。投資リスクは高いものの有望とされる先端技術を実用化する取り組みにより、新たな市場の創出や技術エコシステム発展につなげたい考えで、重点分野に農業技術、材料技術、海洋技術、科学計測を選定した。採択チームには、特許取得や実証事業実施、法人設立、顧客基盤の拡大といった明確な目標達成を求める一方で、専門家によるメンターシップや戦略的パートナーシップなど包括的な支援を提供する。NSFはこの構想を民間投資の呼び水とし、新規アイデアへの投資、企業成長、規模拡大や、国のイノベーション強化につなげていく方針を示している。 NSF “NSF launches Tech Accelerators initiative to speed key technologies to the market faster” (05/27/26) https://www.nsf.gov/tip/updates/nsf-launches-tech-accelerators-initiative-speed-key
アルゴンヌ国立研究所、オープンサイエンス向け大規模AI推論サービスを開始
アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)は5月26日、全米初のオープンサイエンス向け大規模人工知能(AI)推論サービスを開始したと発表した。同研究所のリーダーシップ・コンピューティング施設(Argonne Leadership Computing Facility: ALCF)によるもので科学者が独自のインフラを構築・維持する負担を強いられることなく、大規模言語モデル(LLM)や科学基礎モデルを共有リソースとして利用できる。この取り組みはエネルギー省(Department of Energy)が進める国家AI構想「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」の重要な原動力と位置付けられており、核融合エネルギー研究におけるプラズマ崩壊のリアルタイム予測や、高エネルギー物理学・天文学における膨大なデータの解析などに活用される。ALCFはAIモデルの開発と科学研究実用化への溝を埋め、データから知見・発見に至る道のりを迅速化すると強調しており、「タラ(Tara)」や「ミネルバ(Minerva)」などのエヌビディア社(NVIDIA)の新システムなどを通じて、さらなる機能拡張を図るという。 ANL “Argonne launches first large-scale AI inference service for open science” (05/26/26) https://www.anl.gov/article/argonne-launches-first-largescale-ai-inference-service-for-open-science
国防総省、国防ミッションへの民間技術導入を推進
スペースニュース(SpaceNews)は5月18日、国防総省(Department of Defense)が推進するミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム(Golden Dome)」により民間宇宙企業や投資家、ソフトウェア企業の誘致が活発化していると伝えた。政府は弾道・巡航・極超音速ミサイルから本土防衛のための多層的なネットワーク構築を目指しているが、20年間で1.2兆ドルに達すると試算される巨額コストが課題となっている。これに対し、当局は従来の調達モデルではなく、民間の量産技術や再利用型ロケット、ソフトウェア主導の運用を取り入れ、規模に応じた経済性の確保を急いでいるが、軍事機密の保持と民間参入促進などの相反する課題や民間側に投資リスクを求める調達モデルへの懸念も指摘されている。政府が2028年までの運用能力実証を目指す中、同省は量産時のコスト妥当性といった課題を民間技術で解決したい考えで、特に宇宙配備型迎撃機といった難度の高い技術開発において、新興企業と従来の防衛大手が協力するエコシステムの構築を進めているという。 SpaceNews “Inside Golden Dome’s push to court commercial tech firms and investors” (05/18/26) Inside Golden Dome’s push to court commercial tech firms and investors
エネルギー省と商務省、医療用RI供給を強化 放射性廃棄物からラジウム226を大量回収
エネルギー省(Department of Energy)は5月19日、商務省(Department of Commerce)傘下の米国標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology: NIST)と連携し、放射性廃棄物から最先端のがん治療に不可欠なラジウム226(Ra-226)を大量回収したと発表した。同省傘下科学局(Office of Science)内のアイソトープ研究開発・生産局(Office of Isotope R&D and Production: IRP)による国内の医療用ラジオアイソトープ(Radioisotope: RI)供給網強化に向けた取り組みで、回収されたラジウム226は、原子炉やサイクロトロンでの照射を経て標的α(アルファ)線療法に用いられるアクチニウム225などの重要RI生産のための原料として再利用される。IRPは廃棄物の再利用が安全性向上と戦略的資源の確保を両立させるだけでなく、作業員や施設の安全性向上につながると説明し、パシフィック・ノースウェスト国立研究所(Pacific Northwest National Laboratory: PNNL)などの技術を基に、国内外から同物質の回収・精製を継続し安定供給を図るという。 DOE “Interagency Cooperation Transforms Legacy Waste into Strategic Medical Radioisotope Supply” (05/19/26) https://www.energy.gov/science/articles/interagency-cooperation-transforms-legacy-waste-strategic-medical-radioisotope
気候テック企業、戦略の軸足を「重要鉱物」へ転換
MITテクノロジー・レビュー(MIT Technology Review)は5月21日、国内気候テック企業による供給網(サプライチェーン)強化や重要鉱物確保への取り組み移行について伝えた。連邦政府支援が停滞する中、企業は生き残りをかけて、政府が注目しているデータセンターやエネルギー供給、重要鉱物分野への参入に挑戦している。排出量の少ない製鋼技術で知られるボストン・メタル社(Boston Metal)は、航空機エンジンなどに不可欠なニオブやタンタルなどの重要金属事業支援に向け、新たに7,500万ドルの資金を調達したという。同社は収益性の高い金属事業を展開することで、本業の鉄鋼部門の開発継続に必要なリソースを確保すると説明した。また、セメント新興のブリムストーン社(Brimstone)も政府助成打ち切りを受け、副産物のアルミナが国内アルミニウム生産を支える重要資源との声明を前面に打ち出した。このほか、鉱業との連携を模索する動きや、鉱山操業の効率化や稼働・閉鎖中の鉱山跡地浄化作業の支援を売り込む炭素除去企業も出てきているという。 MIT Technology Review “Climate tech companies are pivoting to critical minerals” (05/21/26) https://www.technologyreview.com/2026/05/21/1137622/climate-tech-pivot-critical-minerals/
アイダホ国立研究所、次世代原子力研究に向けた構造特性研究所を開設
アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory)は5月18日、原子力エネルギーの研究開発とイノベーションを推進する構造特性研究所(Structural Properties Laboratory: SPL)の稼働開始について発表した。同研究所材料・燃料複合施設(Materials and Fuels Complex: MFC)内での原子炉用材料の試験・研究を通じて、既存原子力発電所の運転延長や次世代原子炉開発を安全に行うよう支援するもので、1月下旬から本格稼働した。総額1億6,600万ドルの連邦議会予算による資本建設事業として2020年3月に着工開始し、予算内かつ予定よりも早く完工したとし、安全操作を備えた先端ロボット技術を整備している。特に高放射性物質を扱うホットセルの新規設備導入は、エネルギー省(Department of Energy)傘下の施設では40年以上ぶりとなった。今後数ヶ月で高温燃料試験施設、先進試験炉など他の施設から材料を受け入れ、材料ライブラリを拡充し、研究事業の運用支援を拡大していくという。 INL “Idaho National Laboratory opens Structural Properties Laboratory for advanced nuclear research” (05/18/26) https://inl.gov/news-release/idaho-national-laboratory-opens-structural-properties-laboratory-for-advanced-nuclear-research/
コネチカット州、コネチカット大学に3,500万ドル支援 連邦助成減を一部補填
ニュースサイトのCTインサイダー(CT INSIDER)は5月14日、トランプ政権による連邦助成削減を補うため、コネチカット州のネッド・ラモント知事(Ned Lamont)がコネチカット大学(University of Connecticut: UConn)の研究プログラムに対する3,500万ドルの拠出計画を発表したと報じた。連邦政府による助成削減の影響を受けた同大学や傘下のヘルスセンター(UConn Health)の学術研究支援に向け、州議会が昨秋に設けた準備基金から拠出する。同知事は記者会見で、研究開発費の削減が進む現状に強い懸念を示した上で、同大学の研究が州や国、世界に極めて重要と強調し、同大学のラデンカ・マリッチ学長(Radenka Maric)も計9,500万ドルの連邦資金を失った現状に触れ、州による支援は研究存続と健全性確保に向けた極めて重要な「生命線」と位置付けた。州政府は、全ての削減を補填することは不可能としながらも、経済や労働力強化に直結する重要分野を最優先投資先とし、今後も学術・研究基盤の維持していく方針を示している。 CT INSIDER “Connecticut to give UConn $35 million for research to offset cuts by Trump administration” (05/14/26) https://www.ctinsider.com/news/education/article/uconn-state-funding-federal-funding-gaps-ct-22259057.php
NASA、ミッション遂行加速に向けた組織再編を発表
航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration: NASA)は5月22日、国家宇宙政策の進展と国家最優先事項の迅速な達成に向けた組織再編を発表した。アルテミス計画(Artemis program)の加速や月面基地の建設、宇宙用原子炉の開発といった優先事項に対し、人材と資源を集中させ、各局を長官直属とし、意思決定の迅速化を図る。また、各部門の専門性を高める体制構築に向け、有人宇宙飛行分野では探査システム開発と宇宙運用の両局を統合し、有人宇宙飛行局(Human Spaceflight Mission Directorate: HSMD)を新設した。さらに、航空研究と宇宙技術の両局を統合した研究技術局(Research and Technology Mission Directorate: RTMD)を設立し、原子力発電及び推進システム開発を強化する。ジャレッド・アイザックマン長官(Jared Isaacman)は最も困難な工学的課題に挑む文化醸成に向け、不必要な官僚主義を排除していくと強調した。なお、人員削減やプログラムの中止は行わず、効率的な執行を通じてコスト削減を実現する方針を掲げている。 NASA “NASA Announces Realignment to Accelerate Mission Delivery” (05/22/26) NASA Announces Realignment to Accelerate Mission Delivery
上院、NIST次期所長にアービンド・ラマン氏を承認
米国規格協会(American National Standards Institute: ANSI)は5月20日、上院がアービンド・ラマン氏(Arvind Raman)を米国標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology: NIST)の次期所長に承認したと伝えた。ラマン氏にとって初の連邦政府公職で、商務次官(標準・技術担当)も兼任する。昨年1月より代理所長を務めてきたクレイグ・バークハート氏(Craig Burkhardt)の後任として昨年10月に大統領から指名を受け、今回、正式に就任が決まった。同氏はパデュー大学(Purdue University)で機械工学の修士号を取得し、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)で機械工学の博士号を取得した。2012年からパデュー大学で機械工学教授として教壇に立ち、直近では同大学工学部の学部長を務めた。同大学在職中には米国国際開発局(US Agency for International Development: USAID)が資金提供するレイザー・パルス・コンソーシアム(LASER PULSE Consortium)の主任研究員兼ディレクターも務めた。 ANCI “Senate Confirms Arvind Raman as NIST Director” (05/20/26) https://www.ansi.org/standards-news/all-news/5-20-26-senate-confirms-arvind-raman-as-nist-director
下院歳出委、エネルギー省科学局予算の1%増額案を可決
米国物理協会(American Institute of Physics: AIP)は5月11日、下院歳出委員会がエネルギー省(Department of Energy)科学局(Office of Science)の予算を1%増額する歳出法案を可決したと伝えた。大統領が要求した15%の削減案をくつがえす内容で、開示された詳細な報告書には各部門への具体的な予算配分が記されている。部門別では、先進科学計算研究や基礎エネルギー科学へそれぞれ5%、4%の予算増額となった一方で、大幅な削減が求められていた生物環境研究(Biological and Environmental Research)や核融合エネルギー科学などの一部部門は6%、1%の減額にとどまった。また、高エネルギー物理学は2%増となったほか、原子核物理学や同位体研究開発費は横ばいとなった。さらに同委員会は、主要科学プロジェクトの管理やコスト見積もりの改善計画に関する報告を要請したほか、インフラや運用、将来的な予算への影響をより深く理解するまでは、国立研究所における将来の人工知能(AI)スパコンへの資金提供は見送る方針を示している。 AIP “House releases detailed DOE Office of Science proposal” (05/25/26) https://www.aip.org/fyi/the-week-of-may-25-2026