豪戦略的政策研究所、重要技術トラッカー2025年版を発表

オーストラリア戦略的政策研究所(Australia Strategic Policy Institute: ASPI)は12月1日、重要技術トラッカー(Critical Technology Tracker)の2025年版を発表した。74の現行及び新興技術に関する質の高い研究を評価したもので、66の技術において中国が1位となっている。これには、原子力エネルギー、合成生物学、小型衛星等が含まれる。米国は残りの8技術で1位となっており、量子計算や地球工学等が含まれる。これは今世紀初めには、米国が対象技術の90%以上で1位を占め、中国が5%以下であったことと比べると、劇的な転換である。日本については、かつては8技術で上位5位以内であったが、現在は4技術で上位5位以内となっている。ASPIの分析は、世界中で900万点以上の論文を含むデータベースを基に、被引用数が多い論文の特定とその国の世界的シェアを算出して順位付けしたもので、ASPIは、「トラッカーは特定の国の重要技術における総合的な強さを測定したものではなく、それらにおける研究パフォーマンスを測定したものである」と説明している。 Australian Strategic Policy Institute “ASPI’s Critical Technology Tracker: 2025 updates and 10 new technologies” (12/1/25) ASPI’s Critical Technology Tracker: 2025 updates and 10 new technologies 参考:Nature “China leads research in 90% of crucial technologies — a dramatic shift this century” (12/12/25) https://www.nature.com/articles/d41586-025-04048-7

20州がトランプ政権による10万ドルのH-1Bビザ手数料を巡り、提訴

カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官(Rob Bonta)は12月12日、同州及び19州(全州で民主党の司法長官)が、トランプ政権がH-1Bビザの手数料を10万ドルに引き上げた政策を巡り、同政権を提訴したと発表した。同長官は、同ビザの手数料引き上げは、議会が政権に承認した権限を違法に超えており、プログラム確立の意図を損なっていると主張した。H-1Bビザの最大の利用者は大手技術企業であるが、ボンタ長官は、「手数料の引き上げは、医師や研究者、教員、看護師、公的機関職員の補充がより困難になる等、州経済のその他の重要部門の人材不足も悪化させている」としている。今秋には、米商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)が研究大学と共に、ビザ手数料の引き上げを巡って政権を提訴している。 Politico “20 states lodge lawsuit against Trump’s $100,000 H-1B visa fee” (12/12/25) https://www.politico.com/news/2025/12/12/trump-visa-fee-lawsuit-00689510

トランプ政権、エアタクシー(空飛ぶクルマ)を積極的に推進

トランプ政権は、成長著しいエアタクシー部門で競争する米国企業の押し上げに乗り出しており、2028年のロサンゼルス五輪での技術披露を視野に入れている。政権は、本件に関する複数の大統領令に加え、エアタクシーの急速な普及を支援するデータ収集への新たな取り組みを通じて、政権の輸送議題の一環として同技術を取り入れている。9月には運輸省(Department of Transportation)が、「電気式垂直離着陸機(electronic vertical takeoff and landing vehicles: eVTOL)」(エアタクシーの正式名称)やハイブリッド型、バッテリー型の航空機技術を米国航空システムに統合する方策を模索するパイロットプログラムを発表した。ジョビー・アビエーション社(Joby Aviation)やベータ・テクノロジーズ社(BETA Technologies)など、エアタクシー業界大手や、ミシガン州がこのパイロットプログラムに参加する計画であるという。 Washington Post “Trump administration launches bold air-taxi push” (12/12/25) https://www.washingtonpost.com/transportation/2025/12/12/air-taxis-pilot-program-trump/

CISA、分野横断型サイバーセキュリティパフォーマンス目標の更新版を発表

サイバーセキュリティインフラ保護庁(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency: CISA)は12月11日、分野横断型サイバーセキュリティパフォーマンス目標(Cross-Sector Cybersecurity Performance Goals: CPGs)の2.0版を発表した。CPGsは、あらゆる組織を対象に、サイバーセキュリティを日常業務に統合できるようにするための任意の実践的枠組みである。更新版のCPGsは、米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology:NIST)のサイバーセキュリティ枠組み2.0に整合し、3年間に及ぶ運用上の洞察を取り入れ、データ主導型で行動可能なガイダンスを通じて新興の脅威に対処する内容となっている。従来の1.0.1版からの改良点として、①ガバナンス機能の強化、②運用技術と情報技術の目標を統合した統一目標構造、③脅威への応答拡大、④枠組みの合理化、⑤目標に関する文書の強化、が挙げられる。 Cybersecurity & Infrastructure Security Agency “CISA Unveils Enhanced Cross-Sector Cybersecurity Performance Goals” (12/11/25) https://www.cisa.gov/news-events/news/cisa-unveils-enhanced-cross-sector-cybersecurity-performance-goals

海外敵対者によるライダー(LiDAR)技術の使用を段階的に廃止する新法案

下院の中国共産党特別委員会(House Select Committee on the Chinese Communist Party)のラジャ・クリシュナムールシ議員( Raja Krishnamoorthi, イリノイ州選出民主党)は12月10日、連邦政府及び重要インフラサービス部門内で、中国を含む敵対国家と関連のある企業が生産したライダー(Light Detection and Ranging (LiDAR)、光の検知と測距)技術の使用を段階的に廃止する法案を提出した。ライダー技術は、自動運転車や地理情報システム、その他の先端機能で使用されており、中国企業が同技術の世界的な供給網で主要な足場を確保している点は、サイバーセキュリティ及び国家安全保障上の懸念を引き起こしている。今回提出された法案は、法案成立後3年以内に米国企業が海外敵対者からライダー製品を購入することを禁止し、重要インフラの運用者や連邦事業体には対象となるライダー技術を5年以内に置換することを義務付ける。法案は、ロシアやイラン、北朝鮮等の特定の海外敵対者を対象としているが、その主要な焦点先は中国製ライダーシステムである。 Nextgov “New bill seeks ‘phase-out’ of LiDAR tech tied to foreign adversaries” (12/12/25) https://www.nextgov.com/policy/2025/12/new-bill-seeks-phase-out-lidar-tech-tied-foreign-adversaries/410139/?oref=ng-homepage-river

ロールスロイス社、インディアナ州でMV-75エンジンの試験開始

ロールスロイス社(Rolls-Royce)は、インディアナポリスにある同社最大の米国施設で、米陸軍(U.S. Army)のMV-75将来型長距離強襲機(Future Long-Range Assault Aircraft)のプロトタイプ用AE1107エンジンの試験を開始した。これは、数十億ドル規模のティルトローター(垂直離着陸が可能でプロペラに似た回転翼を傾けて飛行する航空機)プロジェクトにとり、重要な節目となる。陸軍は同プロジェクトの加速化を望んでおり、多くのブラックホーク(Black Hawk)ヘリコプターがこのティルトローターと置換される見込みである。MV-75にはAE1107Fエンジン2基が搭載される予定である。 Axios “Exclusive: Rolls-Royce begins MV-75 engine tests in Indiana” (12/15/25) https://www.axios.com/2025/12/15/rolls-royce-flraa-engines-testing-indianapolis

政府、民間から技術人材確保に向け「テックフォース」発足 

人事管理局(Office of Personnel Management: OPM)は12月15日、「テックフォース(Tech Force)」を設立すると発表した。OMBと一般調達局(General Services Administration: GSA)、科学技術政策局(Office of Science Technology and Policy: OSTP)などが連携し、民間の優秀な技術者を連邦政府に招き入れ、技術革新を推進する試みで、アマゾン・ウェブ・サービス社(Amazon Web Services)やメタ社(Meta)、マイクロソフト社(Microsoft)、オープンAI社(OpenAI)など約30社が初期パートナーとして参加する。具体的には、エンジニアやデータサイエンティストなど1,000人の採用を目指しており、参加者は2年間の任期で年俸13万5,000ドルから19万5,000ドルに加え、民間企業のストックオプションなども保持できる。同プログラムは政府機関ほぼ全域で展開される予定で、AI分野における米国のリーダーシップ実現に向け、参加者を「AI革命を推進する米国の精鋭部隊」として位置付けている。 OPM “OPM Launches US Tech Force to Implement President Trump’s Vision for Technology Leadership” (12/15/25) https://www.opm.gov/news/news-releases/opm-launches-us-tech-force-to-implement-president-trumps-vision-for-technology-leadership/ 参考記事:Axios “Trump turns to Big Tech for AI government workforce” (12/15/25) https://www.axios.com/2025/12/15/trump-big-tech-ai-government-workforce

生成AI、悪用防止に限界 GAO、新技術への対策強化を提言

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は12月15日、生成人工知能(AI)システムの悪用が急速に拡大し、現状では完全な防御が不可能とする報告書を発表した。攻撃者は、安全制御がないとAIに認識させて行う(Do Anything Now: DAN)攻撃などの「ロールプレイ(Roleplaying)」や、無害な段階から徐々に有害コンテンツを作成する「クレッシェンド(Crescendo)」といった巧妙な手法を用いて生成AIに有害コンテンツ生成や機密情報の漏洩を実行し、新システムのリリース翌日には安全対策を突破しているケースもあるという。米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology: NIST)なども、生成AIが自律的に計画を立案・調整する「エージェント型AI」と融合してフィッシングメールの自動作成・送信など複雑で悪意ある指示の実行が可能になると警告した。GAOは、継続的な監視と対策が不可欠としAI評価基準の開発や監査ツールの整備、政府システムAI統合における悪用リスク軽減策の策定などを提言している。 GAO “Science & Tech Spotlight: Malicious Use Of Generative AI” (12/15/25) https://www.gao.gov/products/gao-26-108695

商務省、韓国亜鉛子会社に2憶1,000万ドル投入 重要鉱物の国内生産支援へ

商務省(Department of Commerce)傘下の米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology: NIST)は12月15日、半導体製造に不可欠な重要鉱物の国内生産強化に向け、韓国亜鉛社(Korea Zinc)傘下のクルーシブル・メタルズ社(Crucible Metals)に対し、CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)に基づく2億1,000万ドルの直接資金援助を行うと発表した。総額66億ドルのテネシー州クラークスビルに建設予定の最先端精錬所と重要鉱物処理施設支援の一環で、2029年に操業を開始し、ガリウムやゲルマニウム、インジウムなど半導体、人工知能(AI)、量子コンピューティング、航空宇宙・防衛産業に不可欠な13種類の重要・戦略鉱物を年間54万トン生産する予定である。ただし、運転資金と資金調達費用も含め総額約74億ドルが必要になるとみられ、国防総省(Department of Defense)戦略資本室(Office of Strategic Capital)も条件付き融資を発表した。同時に、韓国亜鉛社は韓国の温山工場から米国へ10種類の重要鉱物を2026年から優先的に供給する。 NIST “Department of Commerce Awards CHIPS Incentives to a Subsidiary of Korea Zinc (Crucible Metals) to Support a State-of-the-Art Smelter and Critical Minerals Processing Facility in the United States” (12/15/25) https://www.nist.gov/news-events/news/2025/12/department-commerce-awards-chips-incentives-subsidiary-korea-zinc-crucible

フェルミ研新所長にノーバート・ホルトカンプ氏

フェルミ国立加速器研究所(Fermi National Accelerator Laboratory: Fermilab)は12月15日、ノーバート・ホルトカンプ氏(Norbert Holtkamp)が2026年1月12日付で新所長に就任すると発表した。SLAC国立加速器研究所(SLAC National Accelerator Laboratory)の元副所長で、現在はフーバー研究所(Hoover Institution)の上級研究員を務めるホルトカンプ氏は、大規模科学プロジェクト管理に豊富な経験を持ち、SLAC在職中には世界最強のX線レーザー、線形加速器(Linac、リニアック)コヒーレント光源(Linac Coherent Light Source upgrade : LCLS-II)の高度化建設を指揮した。また、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor: ITER)の首席副事務局長も務めた経歴があり、就任にあたり、研究所史上最大の実験である長基線ニュートリノ施設/地下深部ニュートリノ実験(Long-Baseline Neutrino Facility for the Deep Underground Neutrino Experiment: LBNF/DUNE)などの主要プロジェクトの推進に注力していくと抱負を述べている。 Fermilab “Norbert Holtkamp appointed director of Fermi National Accelerator Laboratory” (12/15/25) Norbert Holtkamp appointed director of Fermi National Accelerator Laboratory