DARPA、新たな量子マテリアルの追求に着手

量子コンピューティングや検知、通信、信号処理に関する現在の手法は、量子レベルの正確さで情報を操作または処理できる超電導電子機器に依存している。量子力学的プロセスの脆弱な性質ゆえ、これらの機器は絶対零度(摂氏-273/華氏-460)をわずかに上回る温度で冷却される必要がある。このため、大規模な冷蔵ユニットが必要となり、大規模な電力を使用することから、現行技術の拡張性には限界がある。このため、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency: DARPA)の「合成量子ナノ構造(Synthetic Quantum Nanostructures: SynQuaNon)」プログラムは、基礎科学を通じて合成メタマテリアルを開発し、量子情報科学の機能強化と新規能力を実現することでこの課題に対処しようとするものである。SynQuaNonプログラムは、より高い温度での操作が可能で、サイズと重量と電力(size, weight, and power: SWaP)の要件を大幅に低減する新たな人工マテリアル(メタマテリアルやナノパターン構造、量子ヘテロ構造など)について研究する。 Defense Advanced Research Project Agency “Embarking on Quest for New Quantum Materials” (8/9/23)

DAPRA、冷蔵貯蔵を必要とせずに生物見本の保存を可能にするソリューションを模索

新たな感染症のホットスポットは今後50年間に世界で増大することが予測されている。ラボ・ベースの検査技術は進展しているが、本質が不明な生物見本の保存は、依然として冷蔵輸送に依存しており、その入手は容易ではなく、遠隔で状況が厳しく論争的な環境においてはしばしば信頼性が低下する。このような中、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency: DARPA)の「過酷もしくは遠隔地域における微生物の確実な保存(Assured Microbial Preservation in Harsh Or Remote Areas: AMPHORA)」プログラムは、見本の保存と冷蔵貯蔵を切り離し、過酷かつ遠隔の環境での貯蔵と維持の実現可能性を確実にすることを狙いとする。研究者は、様々な細菌や菌類、ウィルスを安定化させ、複数の見本を並行的に保存し、現行のラボでの慣行に匹敵することを確実にするシステムの開発に取り組む。 Defense Advanced Research Project Agency “DARPA Seeks Solutions to Preserve Bio-samples Without Cold Storage” (8/8/23)

国防総省、生成AI作業部会の設立を発表

国防総省(Department of Defense)は8月10日、生成AI(generative artificial intelligence)作業部会の設立を発表した。このイニシアチブは、戦略的かつ責任のある形で人工知能(AI)の力を活用するという国防総省のコミットメントを反映する。キャサリーン・ヒックス副国防長官(Kathleen Hicks)が、「作業部会リマ」(Task Force Lima)に、国防総省内における大規模言語モデル(large language model: LLM)などの生成AIツールの分析及び統合において重要な役割を担うよう通達した。作業部会リマは、最高デジタル及び人工知能局(Chief Digital and Artificial Intelligence Office: CDAO)の主導の下、国防総省内の生成AI能力について、評価、同期化、導入を行い、DODが最先端技術の最前線を維持しつつ、国家安全保障を保護することを確実にすることに取り組む。 Department of Defense “DOD Announces Establishment of Generative AI Task Force” (8/10/23)

バイデン大統領、宇宙司令部をコロラド州に維持することを決定

バイデン大統領は、米宇宙司令部(U.S. Space Command)の本部をコロラド州に据え置くことを決定し、トランプ政権が任期終了間近に決定したアラバマ州への移転案を撤回した。本決定により数か月に及ぶ論争が終わったが、アラバマ州の議員は決定に反対することを表明している。米高官によれば、バイデン大統領は、「現時点で本部を移転することは、軍の準備態勢を危険にさらすだろう」とする宇宙司令部のトップ、ジェームズ・ディキンソン大将(James Dickinson)の主張を受け入れた。しかしディキンソン大将の見解は、長期的な調査を実施し、「アラバマ州ハンツビルへの移転が最善の策」と決断した空軍(Air Force)上層部の見解とは異なる。アラバマ州への移転計画が却下されると、極めて分裂した反応が見られた。コロラド州の議員らは賞賛し、アラバマ州の議員らは「政治的措置」として反発した。米高官によれば、バイデン大統領は、司令部をコロラド・スプリングに置いておくことで、移転によって生じる可能性がある軍の準備態勢の混乱を回避することができ、「特に米国が宇宙で中国との競争を強める中、この点は重要である」と考えているという。 AP News “Biden decides to keep Space Command in Colorado, rejecting move to Alabama” (7/31/23)

エネルギー省、米国初の直接空気回収実証に最高12億ドルを発表

エネルギー省(Department of Energy)は、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」議題の一環として、テキサス州とルイジアナ州における2つの商業規模の直接空気回収(ダイレクト・エアー・キャプチャー、Direct Air Capture: DAC)施設の開発進展に、最高12億ドルを提供すると発表した。この規模としては米国初のプロジェクトで、超党派インフラ法(Bipartisan Infrastructure Law)の資金拠出による「地域DACハブ(Regional DAC Hubs)」プログラムでの最初の選出となる。ハブは、コミュニティ及び労働に関する有意義な関与をもたらし、大統領の「正義40イニシアチブ(Justice40 Initiative)」に寄与する。選出されたプロジェクトは、「プロジェクト・サイプレス(Project Cypress)」(ルイジアナ州)と、「南テキサスDACハブ(South Texas DAC Hub)」(テキサス州)。エネルギー省はまた、プロジェクト開発の初期段階を支援するため、アワード交渉を行う19件のプロジェクトを選出した他、一連の二酸化炭素排除技術の開発と商業化に焦点を当てたプロジェクトとプライズについて複数の資金提供機会を発表する意向を表明した。 Department of Energy “Biden-Harris Administration Announces Up To $1.2 Billion For Nation’s First Direct Air Capture Demonstrations in Texas and Louisiana” (8/11/23)

ジャーマン・マーシャル財団、「AI政策トラッカー」発表

米シンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団(German Marshall Fund)のGMFデジタル(GMF Degital)は、人工知能(AI)に関する米国連邦政府の措置及びイニシアチブをまとめた「AI政策トラッカー(AI policy tracker)」を発表した。行政府及び一部の省庁について、その「ゴール」「応用」「施行」「タイミングもしくは次のステップ」「立法上の成果/目的」の項目別に概説している。トラッカーは、2020年の行政府の措置を皮切りに時系列でまとめられており、今後も定期的に更新される予定である。 German Marshall Fund “AI Policy Tracker” (8/8/23)

米国とイスラエル、科学技術イノベーションに関して協力継続

ハリス副大統領とイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領(Isaac Herzog)は、5年間の新たな合同イニシアチブを発表した。両国は、7,000万ドルを投資(各国最大3,500万ドル)する意向で、中東とアフリカにおける革新的技術を通じた気候スマートな農業と重要水資源の捕獲/貯留/使用の向上を、5年間にわたって支援する。持続可能な食糧生産と水の使用に関するこの投資は、両国間の既存の協力を強化し、世界中で対応力のある食糧システムの構築と気候危機対策の一助となると期待されている。こうした協力は、「技術に関する米=イスラエル戦略的高級対話(U.S.-Israel Strategic High-Level Dialogue on Technology)」を基盤にし、米国とイスラエルの研究及び学術機関の専門性を活用し、世界中の人命と生活を向上する技術への投資促進における米-イスラエル関係の卓越した価値を実証する。 Department of State “New and Ongoing U.S.-Israel Cooperation on Science, Technology, and Innovation” (7/19/23)

「米国の気候法の最大の勝ち組は外国企業」との報道

2022年に成立したインフレ削減法(Inflation Reduction Act: IRA)は、米国がクリーンエネルギー産業を構築する一助として、極めて大規模な政府助成金を放出したが、現在までの所、その最大の恩恵受益者は海外企業となっている。ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の分析によれば、IRAがほぼ1年前に成立して以来、米国のクリーンエネルギー・プロジェクトに約1,100億ドルが拠出された。主に、韓国、日本、中国を拠点とする海外企業が、それらの支出の60%以上を占めるプロジェクトに関わっているという。そうした投資の中で20件の最大規模案件のうち、15件に外国企業が関与している(そのほとんど全てが電池工場)。日本のパナソニック社は、同社がネバダ州とカンザス州で運用もしくは建設している電池工場の生産能力に基づき、税額控除として年間20億ドル以上を得られる可能性がある。同社は米国内に3番目の工場を検討しており、それによって合計額は更に上がるとみられる。IRAは、環境に優しいエネルギー産業の国内サプライチェーンを構築することを意図したものであるが、実際には、電池及び再生可能エネルギー機器を生産する技術は海外にある。インセンティブによってこれらの企業は米国内への投資へと動いており、多くの場合、国内企業と協力している。 Wall Street Journal “The Biggest Winners in America’s Climate Law: Foreign Companies” (7/20/23)

大手自動車メーカー、数千件のEV充電器に10億ドルを投資する計画

電気自動車(EV)の充電スタンド不足が、多くの消費者がEV購入に二の足を踏む原因の一つとなっている中、大手自動車メーカー数社が合同で、数千基のEV充電器設置に投資する。この合同投資に参加するのは、BMW、ゼネラル・モーターズ(General Motors)、ホンダ自動車、ヒョンデ(現代)自動車、起亜、メルセデス・ベンツ社(Mercedes-Bentz)、ステランティス社(Stellantis)の7社。情報筋によれば、7社は充電スタンドを構築する合同ベンチャー企業に合計少なくとも10億ドルを投資する計画であるという。合同ベンチャーは、数年をかけて、都市部及び高速道路エリアに約3万基の急速充電器を設置することを目指す。7社によれば、充電器は全てのEVドライバーが利用可能で、最初の運用開始は2024年半ばを予定している。合同投資は、2017年に欧州で今回の企業の多くが資金提供して形成された同様の充電企業、アイオニティ社(Ionity)をモデルとしている。これらの自動車メーカーはまた、数年以内に自社のEVについてテスラ(Tesla)式の充電ハードウェアへ転換することを計画している。今回、7社によって設立される新会社は、テスラ式の北米充電規格(North American Charging Standard: NACS)とその他のメーカーによって使用されているコンバインド充電システム(Combined Charging System: CCS)の両タイプの充電器を導入する計画である。 Wall Street Journal “Big Automakers Plan Thousands of EV Chargers in $1 Billion U.S. Push” (7/26/23)

NSF、「生命規則」を用いて社会的課題に対処

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)は今般、「社会的課題への対処を目的とした生命規則の利用(Using the Rules of Life to Address Societal Challenges)」と題するプログラムの下、12件のプロジェクトに合計2,700万ドルを提供すると発表した。「生命規則(Rules of Life)」(生物学的な規模、時間、空間で広範な生命システム内及び生命システム間の複雑なやり取り)から学んだ知識を用いて、クリーンな水や植物の持続可能性、炭素捕獲、バイオ安全保障を含む急務の社会的課題に対処する活動を支援する。研究者は、様々な生物学的システムを用いて、飲料水における重金属などの汚染物質の監視、土壌窒素の増加や疾病に強い抵抗力を持つ小麦の開発を通じた食糧安全保障の強化などへ向けて取り組む。 National Science Foundation “NSF uses Rules of Life research to address societal challenges, from clean water to climate change” (8/8/23)