「人間の脳の理解と治療法の開発に関する新たな研究モデルは有望ながら、重大な倫理的懸念を呈する」との報告

米国アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は今般、「人間の神経のオルガノイド、移植、キメラの新興分野(The Emerging Field of Human Neural Organoids, Transplants, and Chimeras)」と題する報告書を発表した。アルツハイマー病などの神経性疾患の治療法が欠落している大きな要因は、人間の脳に関する研究を行うことが困難なためである。動物モデルを使った研究は理解の進展に貢献しているが、こうしたモデルには限界がある。人間の脳を対象とした直接的な研究は原則上はこうした問題を回避できるが、技術/法律/倫理などの側面から実行不可能となっている。こうした中、人間の神経のオルガノイド、移植、キメラを含む新たな研究モデルが開発され、これまで治療が困難とされている脳性疾患の新たな治療の土台作りとなる有望性を示している。しかし、こうしたモデルの進展は、人間と人間以外の動物の境界、福利と動物研究の権利の問題、細胞を研究に使用される人の同意など、様々かつ重大な倫理的懸念を引き起こしている。報告書は、様々な研究形態に対する監督メカニズムについていくつかのファインディングを提示している。 National Academies “New Research Models Offer Promise for Understanding the Human Brain and Finding Pathways to Therapies, But Also Raise Profound Ethical Questions” (4/8/20)

世界のベンチャー資金調達、2020年第1四半期に過去最高の1,250億ドル

クランチベース社(Crunchbase)のデータによれば、2021年第1四半期に、世界のベンチャー投資は1,250億ドルに達した。これは前期比50%増、前年比では94%もの増加となる。1四半期で1,000億ドルを超えたのは初めて。投資ブームに加え、第1四半期には新たなユニコーン・スタートアップ(企業価値が10億ドル以上)が急速なペースで創出された。世界的なパンデミックが1年以上続いた後、S&P500も過去最高となっている。非公開企業が公開企業へ転換する手段は増し、これには昨年から始まった特別買収目的会社(special purpose acquisition company: SPAC)も含まれる。今年第1四半期に最も好調だったのは、後期段階の資金調達だが、初期段階の資金調達も過去最高を記録した。 Crunchbase “Global Venture Funding Hits All-Time Record High $125B In Q1 2021” (4/7/21)

米国イグナイトとプロジェクトOVERCOME、NSF資金によるブロードバンド・アワードに7件のコミュニティを選出

スマートシティの動きを加速させることに取り組む米国イグナイト(US Ignite)は、新規のブロードバンド技術ソリューションを通じてコミュニティをコネクトすることを意図した「プロジェクトOVERCOM(Project OVERCOME)」(270万ドル)において、7件のコミュニティにグラント・アワードを提供すると発表した。プロジェクトOVERCOMEは、米国科学財団(National Science Foundation: NSF)が立ち上げたプログラムで225万ドルを拠出する他、シュミッド・フューチャーズ(Schmidt Futures)が資金的及び戦略的パートナーとして参加し、プロジェクトOVERCOMEの対象となる地理的エリアを拡大すると共に45万ドルを拠出する。USイグナイトは、プロジェクトOVERCOMEを通じて、社会的に恵まれていない層に手を差し伸べるため、革新的な技術的及びコミュニティ関与の手法を組み合わせたブロードバンドの取り組みを始動及び監視する。 US Ignite “US Ignite and Project OVERCOME Select Seven Communities for National Science Foundation-Funded Broadband Awards” (3/30/21)

バイデン大統領の最初の予算要請、科学を大幅増

大統領府の行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB)は、上院歳出委員会(Senate Committee on Appropriations)のパトリック・リーヒー委員長(Patrick Leahy)(民主党、バーモント州選出)宛てに送った、2022年度裁量予算の優先事項を示した文書(4月9日付)には、連邦科学研究機関への大幅増加が提案されている。主なものは次の通り。①国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)は90億ドル増の510億ドル(新設される医療高等研究局(Advanced Research Projects Agency-Health: APRA-H)への65億ドルを含む)。②気候変動及び人間の健康に関する研究に資金を提供するNIHオフィスの予算は、1,000万ドルから1億1千万ドルへ増額。③米国科学財団(National Science Foundation: NSF)の予算は20%(17億ドル)増の102億ドル。④エネルギー省(Department of Energy)科学局(Office of Science)の予算は4億ドル増の74億ドル。⑤米航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration: NASA)は全体で6.3%増の合計247億ドル。⑥米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology:NIST)は研究プログラム、産業プログラムともに大幅増加。 Science “Biden’s first budget request goes big on science” (4/9/21)

バイデン大統領の2022年度裁量予算(1兆5千億ドル)において国内歳出16%増

バイデン大統領による裁量予算要請が発表されたが、低所得者地域の学校や公衆衛生プログラム、気候変動対策への大規模な支援がある一方で、国防総省(Department of Defense)予算は微増となっていることから、多くの議員の支持を得られる見込みは低いとみられている。行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB)が4月9日に発表した「大統領の2020年度裁量予算の要請(The President’s FY 2022 Discretionary Request)」は、議会に対して、非国防プログラムに7,690億ドルを、国防プログラムに7,530億ドルを拠出することを要請している。これは、現行の国内プログラムの予算水準の16%増加となることを示し、軍事費の増加はわずか1.7%となる。軍事予算の微増案は、議会の国防タカ派からの反発を、そして国防予算の10%削減などを求める議会進歩主義者の反発を招くと予測されている。 Politico “Biden’s $1.5T 2022 budget includes 16 percent domestic spending boost” (4/9/21)

商務省、COVID-19のパンデミックに、イノベーションとアントレプレナーシップで対応する「SPRINTチャレンジ」で2,900万ドルを助成

商務省(Department of Commerce)のジーナ・レイモンド長官(Gina Raimondo)は4月6日、経済開発局(Economic Development Administration: EDA)による「イノベーションと技術を通じたパンデミック対応力の拡大(Scaling Pandemic Resilience Through Innovation and Technology: SPRINT)」チャレンジの一環として、44機関に合計2,900万ドルを提供すると発表した。SPRINTチャレンジは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる経済/健康/安全面のリスクにアントレプレナーシップとイノベーションを通じて対処する米国のアントレプレナーの可能性を育成することを目的として始められた。受益プロジェクトの一つであるカリフォルニア大学ロサンジェルス校(University of California, Los Angeles)のLA-R2Cアクセラレータ(LA-R2C Accelerator)は、COVID-19の予防/診断/治療/医療の平等を育成する革新的バイオ科学技術を拡張することを狙いとしている。 Economic Development Administration “U.S. DEPARTMENT OF COMMERCE AWARDS $29 MILLION IN SPRINT CHALLENGE GRANTS TO RESPOND TO CORONAVIRUS PANDEMIC THROUGH INNOVATION AND ENTREPRENEURSHIP” (4/6/21)

バイデン大統領による計画、新規の電気自動車購入消費者に1,000億ドルの販売奨励金を要請

運輸省(Department of Transportation)が議会スタッフへ送付したEメールによると、電気自動車(EV)の普及促進を目的としたバイデン政権による1,740億ドルの提案には、新規購入者への販売報奨金として1,000億ドルと、50万基の充電スタンド建設のための150億ドルが含まれている。販売報奨金は2兆3,000億ドルのインフラ及び雇用に関する提案の一部で、既に既定の税クレジット提供数を超えたゼネラル・モーターズ(General Motors)とテスラ社(Tesla)を中心とした自動車メーカーにとり、大きな押し上げとなる可能性がある。大統領府は、報奨金の配布方法やグラントの金額については明らかにしていない。 Reuters “UPDATE 1-Biden plan calls for $100 bln in new EV consumer rebates -email” (4/7/21)

サンアントニオ統合基地、5Gによる遠隔医療に焦点

国防総省(Department of Defense)は、5G技術の実験を拡大し、医療面の能力強化に努めていることが、最近の契約文書で明らかになった。具体的に、サンアントニオ統合基地(Joint Base San Antonio)は昨年、国防総省による5Gを利用した医療進展の試験サイトとして選出され、昨年12月には全米スペクトラム・コンソーシアム(National Spectrum Consortium)が25億ドルの契約を受注した。これらの試験は、商業用5Gの開発と国防総省の活動の双方を現代化する支援となり得る新たな技術を試験する場所として、実際の現場(軍事拠点)を提供する同省の総合的戦略の一部である。軍がサンアントニオで試験を計画する技術には、人工知能(AI)も含まれる。米国内のその他の軍事基地でも、民間企業と同様の契約が行われているが、その多くは物流と一般的なコネクティビティに焦点を当てた内容である。 Fedscoop “Joint Base San Antonio to focus on 5G for telemedicine” (4/6/21)

大統領府、「ワクチン・パスポート」への関与を否定

大統領府のジェン・サキ報道官(Jen Psaki)は4月6日、バイデン政権がいわゆる「ワクチン・パスポート」システムに関与しないことを明確に発言した。報道官は記者発表の際、「政府は現在も、そして今後も、米国民にワクチン接種を示す証明書を携行することを求めるシステムを支援しない。連邦によるワクチン接種のデータベースはなく、一人一人がワクチン接種証明を持つことを求める連邦の義務付けはない」と発言した。連邦政府はワクチン接種に関するプライバシーについて指針を提供するとしているが、具体的なスケジュールは発表していない。ワクチン・パスポートのシステムに、共和党系の知事は反発しており、テキサス州のグレッグ・アボット知事(Greg Abbott)(共和党)は、ワクチン・パスポートを禁止する行政命令を発表し、フロリダ州のロン・デサンティス知事(Ron DeSantis)(共和党)も、企業が顧客へサービスを提供する前にワクチン・パスポートを求めることを阻止する行政行動を取ると約束している。 The Hill “White House rules out involvement in ‘vaccine passports’” (4/6/21)

エネルギー部門における賃金格差、バイデン大統領の気候計画を脅かす

元エネルギー長官のアーネスト・モニツ氏(Ernest Moniz)が率いるシンクタンクが作成した報告書は、環境に優しいエネルギー部門の労働者の賃金と、旧式の化石燃料部門の労働者のそれとの間に大きな格差があることを示しており、米国内の労働者に気候議題を売り込もうとしているバイデン大統領の努力に大きな障害となる可能性を呈している。具体的には、ソーラー分野の労働者の平均賃金は時給24ドル48セント、天然ガス部門の労働者のそれは同30ドル33セントで、年間で約1万2,000ドルの差があるという。エネルギー部門全体の労働者の賃金は、典型的な米国民の賃金よりも高いが、最高水準の賃金は、原子力、ユーティリティ、天然ガス、石炭業界の労働者となっている。これを受けてモニツ氏は、「エネルギー業界の賃金中央値が経済全般と比べて大幅に高いことは重要なメッセージであるが、必要とされる特殊スキルの違いからエネルギー部門の賃金には明らかな分散がある」と認めている。 Politico “The wage gap that threatens Biden’s climate plan” (4/6/21)