シェブロン・ドクトリンが最高裁で覆された今、法廷における科学的専門性の活用が急務

米最高裁は6月28日、40年に及ぶ「シェブロン・ドクトリン(Chevron doctrine)」の先例を覆した。同ドクトリンは、政策及び規則を策定する際、曖昧な法律の解釈は連邦機関に委ねることを認めた判決である。最高裁がシェブロン・ドクトリンの考え方を覆したことで、連邦機関による意思決定は未知の領域に入り、連邦の政策策定における科学的情報の使われた方は根本的に変わるとみられている。政策策定における力のバランスが次第に法廷に移行しつつある中、連邦の規則策定を巡る訴訟は増加する可能性が高い。40年に及ぶ先例を覆すことで、連邦裁判所は連邦規則の背後にある科学をより頻繁に審査する立場となる。この判決は、連邦政府の全ての部門において、客観的な科学的証拠と専門性を拡張する必要性が急務であることを強調する。特に司法においては、その双方に強く依存する事例への対処において、既に資源不足である。「科学と技術は増大的に複雑になっており、そうしたニーズは高まるばかりである」と、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science: AAAS)は主張する。 American Association for the Advancement of Science “Urgent Need to Scale Scientific Expertise in the Courts with Chevron Doctrine Overturned” (6/28/24)

NATCAST、NSTC労働力パートナー同盟プログラムを開始

国立半導体技術センター(National Semiconductor Technology Center: NSTC)コンソーシアムの運営を目的として設立された非営利事業体のNatcastは7月1日、「NSTC労働力パートナー同盟(NSTC Workforce Partner Alliance: WFPA)」プログラムを開始した。NSTCとして初めての労働力に関する資金提供機会となる。NSTCは、米国CHIPS(CHIPS for America)の一環として商務省(Department of Commerce)の資金拠出を受けている。WFPAプログラムは、米国の半導体設計や製造・生産における重要雇用やスキルの溝に対処するイニシアチブに投資をする。Natcastは、広範な労働力ソリューション提供事業者がこの労働力プログラムに応募するよう奨励している。個人や法人化されていない企業、外国の事業体や海外懸念国と関連のある事業体は応募できない。今回の労働力プログラムは、4~10件の影響力の高いプロジェクトにアワードを提供する計画である。プロポーザルは、1~2年の期間で、1件のアワードにつき50万ドル~200万ドルのプロジェクトであることが求められている。 Natcast “NATCAST LAUNCHES NSTC WORKFORCE PARTNER ALLIANCE PROGRAM” (7/1/24)

インフレ低減法の影響は2024年上半期により明確に

インフレ低減法(Inflation Reduction Act: IRA)の条項に関するガイダンスが発表され、税優遇措置が民間投資を促進しつつある中、IRAの潜在的な影響が次第に明らかになりつつある。財界グループのE2によれば、今年これまでのところ、41の主要クリーンエネルギー・プロジェクトと126億ドルの民間投資が発表されており、内国歳入庁(Internal Revenue Service: IRS)はIRAの「一般的な賃金と見習い制度(prevailing wage and apprenticeship)に関する要件の最終ガイダンス、ならびに税クレジットの譲渡可能な仕組みについて発表している。IRSはまた、IRAによる「技術に特定されない48E及び45Yクレジット」に関するガイダンス提案を行い、エネルギー・コミュニティの適格性に関するガイダンスの明確化を行うなどしている。ある専門家は、「4月に発表された税クレジットの譲渡可能性に関するガイダンスは、新規で活況なクリーン・エネルギーの税クレジット取引を促進する助けとなっている」と述べた。クラックス・クライメット(Crux Climate)は1月、「昨年、70~90億ドルの税クレジット取引が実施された」と報告し、4月には、「今年の取引額はその数を大幅に上回るだろう」と発表した。また、別の専門家は、「2024年のこれまでにおけるIRAの最大の話題は、資金が連邦から州政府や非営利組織、地方自治体へ流入していることである」との見解を示した。 Utility Dive “IRA’s impact grows clearer in H1 2024 as guidance and incentives spur investment” (7/3/24)

SBA、地域クラスターを募集、非営利組織も応募が可能に

中小企業庁(Small Business Administration: SBA)は先般、地域イノベーション・クラスター(Regional Innovation Clusters)イニシアチブの新たな公募を発表した。近年は、営利目的企業のみが応募可能であったが、今回はプログラム当初に戻る形で、非営利組織も応募できる。また、従来の公募からの変化として、プロポーザルには、その取り組みの対象が新興のクラスターか、成熟したクラスターかを含めることが義務付けられた。イニシアチブ開始以来、大学や地域の非営利組織もクラスター組織の管理に成功していたにもかかわらず、SBAは近年、営利目的企業のみに応募を認めていた。本プログラムの資格要件を本来の形に戻すことは、SSTIイノベーション提唱評議会(SSTI Innovation Advocacy Council)の優先事項であった。公募は有用な資金額を明記していないが、500~600万ドルとなる可能性が高い。また、1件あたりのアワード金額も明記されていないが、usaspending.govのレビューによれば、1年の基本年と最大4年間の追加選択肢で年間25万~50万ドルというのが一般的のようである。 SSTi “SBA seeks regional clusters; nonprofits welcome to apply” (7/2/24)

商務省、ローグ・バレー・マイクロデバイス社との予備的規約を発表

商務省(Department of Commerce)は7月1日、ローグ・バレー・マイクロデバイス社(Rogue Valley Microdevices: RVM)との間で、CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)の下、最高670万ドルを提供することを目的とし、拘束力のない予備的規約覚書(preliminary memorandum of terms: PMT)に署名した。本投資を通じて、フロリダ州パーム・ベイにおけるRVMの専業の微小電気機械システム(microelectromechanical systems: MEMS)及びセンサーの工場施設の建設を支援する。これによりRVMの製造能力はほぼ3倍になると試算されている。RVMは、米国のみを拠点とした専業のMEMS工場の一つで、多品種少量生産のウェハーに特化しており、国防産業基盤とバイオメディカル産業とって重要なMEMSファウンドリ・サービスを提供している。今回の投資案によって、バイデン政権は、300mmのウェハーで製造されるMEMS機器の信頼性の高い国内供給を支援しつつ、米国のサプライチェーンの対応力を更に強化すると共に、フロリダ州に75名以上の雇用を創出する。 Department of Commerce “U.S. Department of Commerce Announces Preliminary Terms with Rogue Valley Microdevices to Support the Construction of New Foundry” (7/1/24)

国防総省、国家国防産業戦略暫定実践報告を発表

国防総省(Department of Defense)は7月3日、「国防産業戦略暫定実践報告(National Defense Industrial Strategy (NDIS) Interim Implementation Report)」を発表、NDISで概説された行動の実践へ向けたこれまでの進展を詳述した。NDISは、国防総省が1月に発表したもので、戦略的ビジョンを提示し、国防産業エコシステムの現代化における4つの優先事項を特定している。暫定実践報告は、国防総省内のイニシアチブを概説し、対応力のある産業基盤構築へ向けた取り組みがどのように行われているかを報告している。国防総省は、今夏後半にNDIS実践の更なる詳細を発表する計画である。報告書で詳述されているイニシアチブの多くは、国防次官(産業基盤政策担当)局(Office of the Assistant Secretary of Defense for Industrial Base Policy (OASD(IBP))が管理する国防生産法(Defense Production Act)及び産業基盤分析・持続可能(Industrial Base Analysis and Sustainment)プログラムを通じて資金を得ており、それらは、主要部門におけるサプライチェーンの対応力強化で重要な役割を果たしている。 Department of Defense “DOD Releases National Defense Industrial Strategy Interim Implementation Report” (7/3/24)

グリーン・エラ・キャンパスとアルゴンヌ国立研究所、シカゴでの協力強化に向けて覚書に署名

エネルギー省(Department of Energy)傘下のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)は6月3日、グリーン・エラ・キャンパス(Green Era Campus)と共に、シカゴのアウバーン・グレシャム地域で、新たな覚書(memorandum of understanding: MOU)に署名する式典に参加した。グリーン・エラ・キャンパスとアルゴンヌ国立研究所が、農業の持続可能性や再生可能エネルギー生産、食品の公平性とアクセスの分野での研究機会を合同で模索する中、今回のMOUは、双方の強みを生かすものと期待されている。グリーン・エラ・キャンパスは、複数の事業体とのパートナーシップを通じて、アウバーン・グレシャム地域の9エーカーに及ぶブラウンフィールド(汚染などの懸念により利用されていない土地)を、グリーン・エネルギーや雇用、生鮮品の生産、中小企業のインキュベーションなど、活気のあるハブに変革する取り組み。両組織は、水とエネルギーと食料の接点における気候変動に対処するため、集合的な研究プロジェクトを進展させる資金提供機会に合同で応募し、労働力開発とコミュニティ関与イニシアチブを支援する。 AP News “Green Era Campus and Argonne align to forge community partner-focused agreement in Chicago” (7/1/24)

バイデン政権、12の地域技術ハブへの投資を発表

バイデン政権は7月2日、イノベーション産業の成長促進を目的として、全国12か所で、地域技術及びイノベーション・ハブ(技術ハブ)(Regional Technology and Innovation Hubs: Tech Hubs)への資金提供を発表した。技術ハブ・プログラムは、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」議題の一環として、米国のあらゆる地域にイノベーションをもたらし、新規雇用を創出し、従来投資が不十分であった地域の経済開発を促進する。投資総額は5億4,000万ドル。技術ハブを通じて、米国の労働者や企業、コミュニティを、半導体やクリーン・エネルギー、バイオテクノロジーなどの未来産業を先導する立場に位置付ける。具体的には、①エレベート・クワンタム(Elevate Quantum)が先導する「エレベート量子テックハブ(Elevate Quantum Tech Hub)」(コロラド州とニューメキシコ州。受益金額は約4,100万ドル)、②アクセラレート・モンタナ(Accelerate Montana)が先導する「ヘッドウォーターズ・ハブ(Headwaters Hub)」(スマートな自動フォトニック遠隔検知技術)(モンタナ州。約4,100万ドル)、③アプライド・リサーチ・インスティチュート(Applied Research Institute)が先導する「ハートランド・バイオワークス(Heartland BioWorks)」(インディアナ州。約5,100万ドル)など、合計12か所。 White House “Fact Sheet: Biden-⁠Harris Administration Announces Investment in Twelve Regional Technology Hubs, Creating Good-paying Jobs and Driving Economic Opportunity and Innovation in Communities Across the Country” (7/2/24)

LG社、55億ドルのアリゾナ州電池工場の一部建設を一時停止

LGエナジー・ソリューション社(LG Energy Solution)の声明によれば、同社は、アリゾナ州クリーン・クリークで進めている55億ドルの電池製造複合施設の一部の建設を一時的に停止する。同複合施設は、円筒形電池セル工場と、エネルギー貯蔵システム電池工場の2つの製造施設で構成されている。LG社によれば、エネルギー貯蔵システム電池工場のみが一時停止となり、電気自動車(EV)用の円筒形電池セル施設の建設は計画通り進められる。同社は、「計画されている投資実行ペースを市場の状況に応じて効率的かつ柔軟に調整している」とした上で、「我々は、米国のエネルギー貯蔵システム市場の継続的な成長を期待しており、本施設は、自社の北米事業において重要な役割を担うと、引き続き確信している」と声明した。クイーン・クリーク・タウンは、「この規模のプロジェクトにおいては、建設の遅延やプロジェクトのスケジュール変更は異例ではない」としている。 Utility Dive “LG pauses construction on part of $5.5B Arizona battery plant” (7/2/24)

ローレンス・バークレー国立研究所、地域の電力グリッドへの投資に関する新たな意思決定枠組みを発表

データ・センターや製造、電気自動車、ソーラー、貯蔵は、電力負荷と地元のグリッドへの投資を形成する勢力の一部である。電力需要とインフラのニーズが高まる中、信頼性と対応力を備えた手頃な価格の電力システムのために、頑強なユーティリティ計画は極めて重要となっている。ローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)が発表した「統合配電システム計画(Integrated Distribution System Planning)」は、地域のグリッドへの長期的な投資のためのインタラクティブな意思決定枠組みで、これらやその他の政策目標の達成、ユーティリティの顧客ニーズ、グリッドの進化にも焦点を当てている。この統合配電システム計画は、多くの州政府が配電型計画の要件を採択しつつある中、ユーティリティ機関や州政府、関係者が共通の理解を得られるよう設計されたもので、①電力負荷と分散型エネルギー資源に関する予測、②シナリオ分析、③ホスティング能力分析、など、計画における17の主要なトピックに焦点を当てている。 Lawrence Berkeley National Laboratory “New Decision Framework for Investing in Local Power Grids” (7/1/24)